朝靄を樹間に乗せて上高地

沢渡からタクシーにて、

トンネルを潜り大正池の辺りを過ぎると樹木の間間に白い靄が漂い始め

7:37河童橋お天気晴れ、雲が少しかかっている程度


「亭主の好きな赤烏帽子」

河童橋で。カメラを整える。
「亭主の好きな赤烏帽子」

8:12明神着。トイレ休憩8:20出発

ショウマ手招くといへど風が吹き


「亭主の好きな赤烏帽子」 「亭主の好きな赤烏帽子」

川向こうに明神だけの威容が。         森深くなっている道端にサンカヨウの実が。

「亭主の好きな赤烏帽子」
夘の花が陽に洗われて一層のこと白い。

9:07徳沢着9:14出発


「亭主の好きな赤烏帽子」 「亭主の好きな赤烏帽子」

「亭主の好きな赤烏帽子」

(1560Mの看板がある)

最初からかなりの急坂になる。

じくざぐを切って栂の大木の斜面を上って行く。

山肌はたいていは熊笹に覆われている。

涼しい風が絶えず山の下の方から吹いてきていて、

汗が噴出す、というほどではなかった。

10:00(1810M)

蝶ヶ岳蝶よ花よとおだてられて

ここまで登ってきたが、まだまだ出だしだという感じ。

栂の大木の根方に腰をおろして休むと、あたりに一面に低く高く蝶が乱舞している。


「亭主の好きな赤烏帽子」

なるほど蝶ヶ岳かと合点するが不思議な光景であった。

ウグイスが鳴いて、涼風が吹いた。

親子ほどもと思うほどの齢の離れているだろうと思われる不思議なつれ同士が隣に休んでいた。

男性は若く、女性は50歳くらいだらうか。


10:22少し平めいたところに出る(1930M)。

下ろしたリュックの肩口に蝶が留まって翅をゆっくり広げたり閉じたりしている。


「亭主の好きな赤烏帽子」

老年のご夫婦と挨拶を交わす。

大木は相変わらず地表から空に向かって聳えるように繁っている。

樹幹から青空がまばらにのぞく。

たいした斜度ではないがそれでも飽きがくるやうな変化の乏しい山中をじりじりと上って行く。

シラビソの小さい樹木も混じり始めるころ、

苔むすやうな林間に径の傍らコゼンタチバナが群れをなして花咲く光景が臨出するやうになる。

これほど葉っぱが緑緑しているゴゼンタチバナもめずらしいのではないか。


「亭主の好きな赤烏帽子」

明らかに相方の穂苅氏の調子が悪さうである。

ピッチが上がらない。

それよりもわたしに遅れ気味になるとは。

登山路に倒木する幹に腰をおろして休憩する


「亭主の好きな赤烏帽子」
(11:03。2115M)。


「亭主の好きな赤烏帽子」 「亭主の好きな赤烏帽子」
オウレン                       木の蔭にかわいらしいお花、何でしょうか。

陽射しはようやくかなり暑く、

樹間を通して強く頭上や背中に攻めかかってくる。


水の流れでえぐられたやうな径も、

時たま樹幹が途切れると太陽の反射に径が眩しく感じられるほどである。

単独で登っておいでの妙齢の女性が、後になったり先になったりした。

女性のリュックサックの後ろの収納には団扇が納められており、

林間に彼女のあとを追いかけると一抹の涼味を感じるのであった。

なんとなく登りが終わったのではないかと思わせるところに進む。

前方には雷でやられでもしたのか倒れかかった幹が何本か、


「亭主の好きな赤烏帽子」

背景の青空に浮き上がるように見えた。

なだらかに登ったり下りたりするような径が続き、

右手に可哀そうなような名前の泥沼、

なるほど確かに泥のように黒ずんで暑苦しく溜まった沼の、

そこを過ぎるとやがて長塀かべ山の三角点に出る。


「亭主の好きな赤烏帽子」 「亭主の好きな赤烏帽子」
イワカガミ

長塀を下るでもなく登るでもなくといった径をやや進むと、

径は右手に斜面を見せ、

林間の向こうに明らかに黄色い花園のような景色を垣間見せる。


「亭主の好きな赤烏帽子」

右手になだれた斜面にまずはサンカヨウの真っ白な花を見つけた。

そしてそのすぐ隣にキヌガサソウの白い花の

未だ若々しく花のふち辺りになんとなく薄い緑色が残っているような一輪さへも見つけた。


「亭主の好きな赤烏帽子」 「亭主の好きな赤烏帽子」
サンカヨウ                        キヌガツソウ

黄色い花の斜面へと足早に下りて行く。

カルデラのやうに深く落ち込んだ沼があった。

沼は水が滞留したままで決してきれいだなんて云えないが、

ロート状になった沼の周りの斜面はキンバイやキンポウゲの花盛りになっていた。

登山路から少し右に入ったところの細い径のやうなところで

ようやく遅い昼食とする12:50(2435M)。


「亭主の好きな赤烏帽子」 「亭主の好きな赤烏帽子」

冷凍して持っていった缶ビールはちょうど飲み頃に。

枝豆も冷えて、ゆで卵も、玉蜀黍もちょうどよい按配になっていた。

ソーセージももちろん定番である。

花畑を目前にして、絶景の昼食であった。

(ただ、大きめの蚊がうるさくたかってくる、鈍重であったが)


「亭主の好きな赤烏帽子」 「亭主の好きな赤烏帽子」
                            見事なキヌガサソウの若々しい叢も。

実際の妖精の池とは実はその先をもう少し行ったところにあった。


「亭主の好きな赤烏帽子」 「亭主の好きな赤烏帽子」

こちらの池は水もやや澄んで、池の周りの花の種類も色とりどりであった。

イチゲの白、コバイケソウの白、カラマツソウの白、シナノキンバイの黄色、

キンポウゲの黄色、ハクサンチドリの紫、ヨツバシオガマの紫・・・


「亭主の好きな赤烏帽子」 「亭主の好きな赤烏帽子」


「亭主の好きな赤烏帽子」
「亭主の好きな赤烏帽子」

「亭主の好きな赤烏帽子」 「亭主の好きな赤烏帽子」
イチゲにカラマツソアもまじってにぎやかに。  ハクサンチドリ

斜面が色とりどりに賑わいだす。

花の背丈まで自身の身長を縮め、這い蹲るやうにして写真を撮っている人もいた。

ミヤマスミレの黄色、イワカガミの紅色も集団で群れをなし、


「亭主の好きな赤烏帽子」 「亭主の好きな赤烏帽子」
                             ミヤマスミレ


「亭主の好きな赤烏帽子」
道を少し進むと左手にまず今日の最初の槍ヶ岳が見えた。



「亭主の好きな赤烏帽子」 「亭主の好きな赤烏帽子」
オウレンの叢                    イワカガミの群落

妖精の池を惜しみつつ先を行けば雪渓に出る。


「亭主の好きな赤烏帽子」

雪渓を右に回り込むように進むと


「亭主の好きな赤烏帽子」 「亭主の好きな赤烏帽子」
雪渓の縁に咲いていた可憐な花たち。

前方の斜面にイチゲの叢が雪を下ろしたかのやうに緑の斜面を飾り、

その斜面の一段先に栂の木の濃い緑が、

そしてその樹間の彼方に槍ヶ岳が青く突っ立って見えていた。


「亭主の好きな赤烏帽子」
下方に咲き乱れているのはイチゲの花である。


右上の斜面の中腹を見やると一団の人の群れがみな同じ方向に向かって休んでいるのが見えた。

内心にある激しい予兆への期待が湧き上がってくる。


ガレ場をじぐ、ざぐ、すると斜面の中腹に出た。

思い思いに腰をおろして見やると、

眼の前に雄大な青い青い雪の混じった連峰、

穂高山稜と槍ヶ岳の連なりが飛び込んできた。


「亭主の好きな赤烏帽子」

こんなにすごいものを見てはしばらく黙っているしかないではないか。

こんなに真剣なものを見ては

己のうちに問いかけるしかないではないか

しかも、なぜとは問いかけられぬ

2600メートルの高地で

ふりかえったら穂高連峰と槍ヶ岳が眼に飛び込んでくる

しばし、礫の上に無心に腰を下ろし

茫然として稜線の遥かなのを見る

激しく見上げる視線の頂稜と

激しく見降ろす谷深き視線とがいっしょになって

遠くに雲が湧き立った。


1720年のバッハの調べがなぜ突然時空を超えて私の頭の中に響くのだ

時があまりに甘美なので人は時刻に自身を委ね

石のガレ場に思い切り身を横たへる

まだ午後の3時を回ったばかりだ

一瞥しただけで全世界が今、

あたかも一つの啓示や精神のやうに屹立して立ち現われてくる

さうであれば、すべては余分なことではないか



「亭主の好きな赤烏帽子」 「亭主の好きな赤烏帽子」
再び頂上を目指して。                 登山路の脇に。

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ツメクサも咲いて。


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到着です。


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頂上より小屋を眺める。              ミヤマダイコンソウか。


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ベッドに荷物を置いて、まだ陽も暖かい外へ。


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今日の一枚。

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                            やがて夕暮れに。


「亭主の好きな赤烏帽子」
夕食である。


7/17(日)晴れ

「亭主の好きな赤烏帽子」 「亭主の好きな赤烏帽子」


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「亭主の好きな赤烏帽子」
お月さまと焼岳


「亭主の好きな赤烏帽子」
朝食5:00


5:45蝶ヶ岳山荘を出発


「亭主の好きな赤烏帽子」

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奥深い常念の見事な山姿である。       三角点へ向かって。


「亭主の好きな赤烏帽子」



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健気に、イワギキョウか。


「亭主の好きな赤烏帽子」 「亭主の好きな赤烏帽子」  

名残を惜しみ惜しみお山に分かれて。


三角点に登り、槍、穂高、富士山などを見ながら三角点を分岐に向かって引き返す。

6:45分岐点に。分岐点を下山する。

すぐに樹間に入り、ひたすらじぐざぐを時たまダケカンバが混じるがシラビソの林の中を下山する。

栂の大木がふっと途切れる平らな場所に出て、一息入れる。

素晴らしい手ごろな場所だ。

一本の倒木が斜面の下側に転がり倒れ、その背景に樹木が途切れ、

その最奥にまた槍ヶ岳が青々とまた金物色の厳しい面つきで立ち現われていた(7:50)。

我々二人はてっきりここが地図上の槍見台だと勘違いしてしまった。


「亭主の好きな赤烏帽子」

8:12槍見台

8:40横尾。

下山してウグイスを聞く横尾かな

ようやく下界に降りてきたという気分が満溢してきて、

横尾山荘の茶色の建物が樹間に見えてくると心も和みほっと一息をつくのであった。

梓川の清流に下りて、顔を洗う。

眼鏡もはずし、岸近くの石にしっかりと足をおろし、

思いっきり何度も水を両手に掬った。

何という冷たさだ。

何という心地よさ。

穂高に向かう吊橋を下から見憂げ、振り返って常念岳の方も清流の彼方に見やった。

トイレも済まし8:56出発

9:52徳沢着。

一息を付くがすぐに出発をする。

10:35明神着。

待ちに待った昼食。

ここまで来ればというリラックスした気分。

カレーライスに二人とも缶ビールを注文、

タイムスケジュールといい、お天気といい、花々といい、すべて完璧である。

各々の自己満足も入れて、昨日、けふの山行に改めて乾杯をいたす。

名も知らぬ花の涼しさ上高地

知らぬ花でもここ、上高地に来れば、花の風情はみな涼しげである。

11:00明神を出発。


お疲れ様でございました。


私はこの後中央高速をぶっとばしてかみさんの実家へ。

葡萄の棚下に入り、葡萄の房の笠かけをしたのでありました。

その夜のビールのうまさはまた格別なのでありました。


倉石智證