お歌いなさい
秋の歌を
高らかに稲の実りの歌を
あの青く澄んだ空と、
あの高い山々に向かって、
お歌いなさい、朗らかに
豊かに実った稲や芋の類の、
山には栗もドングリも、
リスたちもいそがしい
お歌いなさい
むかしの歌も、
恋もワインもヴェルベットも
ほつれた絨毯の隅に宿るむかしの恋も
元気だったよと、
手を取りてホールの真中に
歩み出て
やはらかき腰を抱きて
踊るよ
お歌いなさい
やはり秋の歌を
あれは何もなかったことだよと
少しも心配することなどないのだよと
海の歌も波も、
そのままに曳いたりかへしたりするけれど
海の波の寄せる砂浜に
砂が寄せてはかへす
いつまでもそのまま
心配することは何もないのだよと
お歌いなさい
いつまでも
秋の歌を波のまにまに
トンボが生れる
コスモスが揺れる
零余子が生れる
歌が生まれる
田に種々のバッタが飛び
稲の穂先が一斉に揺れる
穂が揺れるたび門々から人も飛びだし
べんぷする
べんぷする
もう誰も止められない
踊っても、
踊っても、
もう踊り足りないのだ
お歌いなさい
やはり秋の歌を
むかしの恋は仕舞ひ込んで
真っ青に晴れた田舎の田圃の道で
篠笛や祭り太鼓に合はせて
小春日和
けふは何もかも許されるといふ
列になって
あなたが喉が破れるほど歌へば
べんぶする
列になって
山の神々や
海の神々にも
陽が翳るまで
歌っても、
踊っても、
倉石智證