僕のアルブミンがこぼれ出た

僕は僕の糸球体を見たことはないが

たしかにどうもそこいら辺から洩れくるらしい


朝にむらさきつゆ草を見に行った

犬の散歩のついでにと思ったが

朝陽がこぼれ出るまぎわ

露がむらさき色にのってゐる

露がこぼれ落ちる光りの玉の

陽にかざしてこぼれ落ちる寸前

どうにか

透明なむらさきの玉の光りに

間に合った


どうも、いつもなにかが洩れくるらしい

じっと、気長に待つ

透析をしていたら

どうも睡眠が僕の視床の辺りから急に頭蓋の表にこぼれ漏れた

尿たんぱくだよ・・・

糖尿病だよ・・・

水晶体がこぼれ洩れた

・・・眠ってしまったらしい

ふっと、眼が覚める

しかし、

どうにも眩しくていけない


むらさきつゆ草の葉脈が透けて見える

彼女の静脈が透けて見える

きれいな襟足に耳朶が陽に透けて見える

きれいだな

彼女に僕の糸球体のことを話したら

彼女は吃驚して

まんまるな眼を

さらにまんまるにした


朝───

露草

むらさき色

陽の光り

僕の疾乎


倉石智證

妻の話では人工透析には大変な量の水が必要らしくて、

嘘か本当か知らないが何十㍑もの水の流れが並行されるとか。

本人自身にとっても大変な負荷で、映像でよくみられるように、

透析のベッドがずらりと並んでいる。

いくつもチューブが人工腎臓のようなモノにつながって、

粛々と時間が流れてゆく。

しかし、話に聞くことでは、下手をすればすぐ隣のベッドの患者さんが、

稀なことではあるが亡くなってしまうことすらあるのだ。

血液が薄くなるとつい眠くなることもある。

大変な時間にほぼ一日の大半が費やされる。

そのくらい腎臓と、その中にしまわれている糸球体は大事な役目を果たしている。

だが、齢をとると至るところが破けるか、締まりが悪くなって来るやうで、

液漿はもはや細胞のいたるところから洩れにじみ出てくるのだ。

関係のない話ではあるが、

道理で最近やたら涙もろくなったものだ。