手の云い分のことは尻は知らない

右手の云い分のことは左手は知らない

手はあれこれ云ふが

脚は全くそれにそぐわない

股ぐらはさらにあきれるほどに奔放になった


でんでんむしむしかたつむり

おまへの頭はどこにある

手八丁、口八丁、

とは云ふものの

実のところはさっぱり分からないのだ

頭はどこだ

手はどこにある

手は巫山戯てゐるわけではない

まさぐる、くすぐる

擽り

恥の多い人生だった

両手は顔を覆う

だが両手の下に顔がない

眼がない、鼻がない

口が大きく開いて

赤い長い舌が出た

あれは嘘をついてゐる


乳房は手の云い分のことを聞かない

乳房は手の為にあるといふに

手加減してよ

いや、手加減は要らない

きっちり決めてもらいたいものだ

手塩にかけて育てたんだもの

でんでんむし、でんでんむし

いまさら何処へお出かけになる

赤い傘をさして

でんでんむしが傘の下を

つの出せ

やり出せ

出さぬならまいまいかたつむり

踏み破ってしまうぞ


乳房は手の為にあるといふに

乳暈にゅううんたしかに亜麻色に暈かさとなり乳色に輝き

手はそれをたわゝに

もみしだく、やさしく

乳房は手の下にあって、

脚はおへその下に

脚は、足掻く、足のこと

逃げろ、逃げろ、逃げる

手はさっぱり脚のことは分からない

ちぐはぐにマリオネット

脚は一目散に逃げる

手は必死になって追いかける


秋風が吹いて

そろそろマリオネット

公園の手品師

さっと幕が下りた

股座の奔放さはさっぱり収まらない

手は所在なげになった


倉石智證