かくていふ───
つぶらな瞳閉じて云ふ
カバにパンツを穿かせても
いややっぱりの真うちは
象さんこそがあらまほし
象のパンツをはかせつつその長い鼻太い足
わたしは心底惚れたんだ
象さんの凄み醍醐味足の裏
象さんにパンツを穿かせたら花子になった
カバさんにパンツを穿かせたら太郎になった
象さんのいやいやだって恥ずかしい
カバさんのいやいやだって悩ましい
河馬と象さん連れだって雲の下照る季節風
この自由こそ百気圧
旅立てば駿河の国の茶のかほり
富士に見る河馬と象との連れだって
浦ゆ うち出る田子浦
さねさし相模円弧描く
あなたはそっとやって来る、何年も何年もかけて私のもとへ
深刻な美しさ
それは雲胡のやうなもので
手にすれば背中せなに泡立つ
ジュラ紀や白亜紀が過ぎて雲がものすごい勢いで頭上を翔んだ
新宿の富久町に立ちてわたしは遥かな虚空の先を眺めた
緑の蔓と蔓との絡まりあった先に直ぐそこに蒼い蒼い太平洋が見えた。
たったマンションの8階からである。
ものすごい反省と悔恨をこめて太郎と花子をあらためて見やった。
花子のパンツ桃色に
太郎のパンツ緑色
胸と腹との境もなく
心底裏も裏もなし
考へるなし太郎には
腰と腰との押し合ひて
目と口だけのその世界
子の迷惑も顧みず
ただ色っぽいやるせなひ
花子たちは無論独立した地をゆく集団であった
風水は賢者の独歩
象さんの長生き
ジュラ紀はとほい嘘に決まっているが
花子は花子の子供の死を
花子は花子の母、およびじ様の死を
そしていつしか齢を過ぎた
旅ゆけば駿河の国の、ああなんと
メコンはとほく富士の国
ただ泣くばかり死者の書を
耳欹そばだてて地と天と
別れを誘ふ大き声
五臓六腑に沁みわたる
ただ前足の土を搔き
ただ放尿の音高き
いまでは花子のパンツと太郎のパンツを
ヴェランダに出て物干しざおに陽に干さなければならない
倉石智證