1968レオノーラ・キャリントン「円舞」
あなたはなんでもそれでいいのだと云ふが
紙飛行キが庭に降りた
指で宙にまるを描く
ひゅッとつむじ風が吹いて
紙飛行キは見知らぬ家の庭に
くるりと舞って降りた
今ではあんまり見かけない郵便ポスト
潮と風とで赤と緑が錆びた
訪れる者とてない
誰も知らない
あなたはなんでもそれでいいのだと云ふが
紙飛行キは不憫だ
夜が来て、朝が来る
昼顔がドッと咲いて蔓がポストの縁まで伸びた
郵便ポストと紙飛行キと
昼顔が咲いて少し賑やかになった
タレカ見テヤレヨ・・・
紙飛行キを開くとへたくそな字で「さみしい」と書いてあった
見てはならないものを見てしまったやうな気がして
あわてゝ閉じた
オイ、大根持ってどこへ行くサ
ちゃぐちゃぐ馬こはせてごい
ほんとにほんとにめんこいなぁ
「元気だ」と書いて紙飛行キを翔ばした
あんなにも空は晴れていたのに
空はさッと曇って雨が泪のやうに降った
紙飛行キは届いただらうか。
倉石智證
