てっ辺の頭つむの呪文ゆすられて南無阿弥陀仏墨染にゆく
ようやくに墨染のお坊さんが三陸に経を唱える。
墨染や───
赤い血のこと何唄う
煤けた頬をどんなにか
地ゆき海ゆき踏み迷ふ
死者忘れない立ち上がる
須臾しゅゆ線香のけぶり立ち
読経の声の重なりぬ
門に入れぬおびただし
人たましひもありぬるを
ただ手を合わせこもごもに
私でよければ地に伏して
笞むち皮膚を裂くヘモグロビン
乾いてゆけばかあさんの
だめそっちへは忘れない
だめそっちへととおさんは
流れて砂の泥水を
眼に罅ひび割れて佇立せり、
海何百と佇立せり
底ゐに列を黒々と
大陸溝に消へゆきぬ
桜が咲いたかあさんの
桜が咲いたとおさんの
ひと通せんぼそのさきは
萌えの境の絶壁の
鳥飛ぶ空のあをさゆへ
輪の無心さに放心す
凸地凹地の細道を
われとおりゃんせ瓦礫がりゃくする
海のにほひにまじり来て
ははかあさんを呼んでみる
風のにほいに起き上がる
ちちとおさんを夢にみる
長いさかみち丘のうへ
弁当みっつはこびましょう
ひろげてみれば何ゆへに
ゑみさす丘の桜かな
・・・・・
ひろげてみれば何ゆへに
ゑみさす丘の桜かな
倉石智證