名目金利、実質金利、仕入れ金利、貸出金利、マイナス金利
政策金利は入口の金利で中央銀行は長短金利の差のカーブ「イールドカープ」の接点を
どの位置にどんな風に据えつけるかがいつもの仕事になる。
物価と景気の両方を見ながら政策金利の均衡点を探す。
市場には出し手と受け手がいて運用と調達が需要供給の関係の中でバランスしていく。
翌日物金利は政府の短期証券から10年物債へと次第にその差を上げていく。
中銀はイールドカーブを接点することでその後の金利をドライブしていくわけだ。
たとえば政策金利が低く維持され銀行の貸出金利が上ならば、銀行の収益確保の後押しになる。
すべて市場は“さや抜き”で成り立っている。
その間、市場は無数にちりばめられており、
債券市場、株式市場、為替市場、投信、ETF、REIT、商品市場等々、
さらに先物から、デリバティブ、リスク保証やリスク売買市場などがある。
投資家がおり、受託する人がいたり、運用のプロは様々なポートフォリオを駆使し、
または反対売買をして利益を出す。
そんなこんなもあるから流動性、つまり経済の血流が確保されるということになるが、
しかし、金融の根本は「信」である。
一度それらが失われると経済の信用の経路が毀損し、
それらは不良資産を生み、最終的には資本の部も毀傷し始める。
単一の金融機関のみならず、広範な金融ネットワークが凍りつき、与信どころではなく金融危機となる。
中銀がドライブするとは何か、物価と景気の双方に気を配りつつ、金融全体の実際を監視続ける。
しかし、市場は人々の思惑とマネーの本質で動いており、それらは水の流れと同じであり、
有り余るエネルギーがどこかに過剰に溜まり過ぎたりすると突如決壊し、
奔流となって襲い掛かかり人々の生活を流し去る。
奔流となってしまってからはもはや中銀や政府といえども手が付けられないのだ。
起きてしまったことは仕方がない。
しかし、金利を使った景気回復はないのか。
日本は85年<プラザ合意>からは円高であり+低金利でアクセルを踏み込んだ。
人口ボーナスが存在した田中角栄さんのときと、
明らかに人口が停滞し始め、90年代に入ってから逆に人口オーナスになった時代とは
はっきりと区別して考えたほうがよかろう。
角栄さんのころはまだ世間もブイブイで、金利(マネーの「使用料」)も高かった。
だがバブルがはじけ橋本大蔵大臣がうかつにも一気に総量規制に走り金利を引き締めたあと、
眼に見えてバランスシート不況が始まり、93年ころからは低金利はもはや当たり前のこととなった。
94年、メキシコ通貨危機が起こり、クリントンのアメリカの態度が変わった。
南米やバブルでもはや利回りの悪い日本に見切りをつけ、中国に肩入れし始めた。
はっきり言って中国の元安を容認、あるいは積極的に支持したのだ。
(94,1月、=約30%切り下➘げ)。
95年にロバート・ルービン財務長官ははっきりと「ドル高」宣言をする。
米国の金利も高いままだ。直前日本の為替も=79.75円という史上空前の円高をつけたが(95,4/19日)
それはおそらくはメキシコ通貨危機の影響でむろん日本の経済の実力を映すものではない。
ミスター“円”こと榊原財務次官はルービンこと米国と歩調を合わせ「ドル高・円安」へと舵を切る。
※よく考えて欲しい。
世界の戦略とは結局、原子力空母や第7艦隊やステルスではなく、
日本の頭上を飛び越えて中国の元安を演出したクリントン米政権なのだ。
つまり、軍事力よりも“利回り”をいかにに世界のなかに構築するか、なのだ。
米国の「ドル高」と「金利高」はこの後の米国の景気を運営し、
典型的な金融資本主義のモデルを構築するとともに世界からマネーを集め、
また世界に再投資して効率のよい利回りを生み出すターンテーブルとなり、
また93年ころからIT革命が米国の生産性を上げ、米国のひとり勝ちを確実なものにしていった。
鷹揚なようでいて傲慢な慢心したアメリカが生まれてくる。
一方、冷戦が終わり、東側の国からも多くのプレーヤーが参入したとはいえ、
まだ産業基盤も弱く、2000年過ぎてからのエネルギー需要に火は点かないまま、
原油価格は90年代を通じて=20㌦近辺。
中東は国内の人口増加と経済の低迷と資源価格の低迷で先進国欧米に対する不満や、
あるいは一部タリバンのような過激な憎悪を溜め込んでくる。
私が「金利政策」(為替にも連動)に関心があるのは、
金利政策は財政出動と違って、とりあえずの政府の懐が痛まないからである。
各国の金利政策を探ってみよう。
ブラジル
適正な金利とはなんであるか。ブラジルの場合では──
■政治が安定している。誰が大統領になっても大きな政策変更の可能性は低い(投資機会の安定性)。
■政策金利=9.25%と一ケタ台に下がった。→8.5%まで下げるだろう。
インフレ目標(「景気」)の=4.5%を引くと、実質金利が=4%(成長金利)と適切な水準だ。
■内需は落ちていない。ルラ政権の
・最低賃金引上げや
・手厚い家族手当は効果的だ。
ブラジル人は消費好きだが、
・ローン規制が厳しいせいで過剰ではない。
来年の成長率〓4~4.5%の成長が可能だ。
元々、中国ほどの成長力はない。ブラジルは=4%程度の成長が続いていく形だ。
(ルイスカルロス・メンドーサ・元ブラジル中銀理事09,7/9日経)
※資源国家であることをフルに利用して、しかし、身の丈サイズの経済成長を守る。
※政策金利-インフレ目標=実質金利――
「インフレ目標値」を暗に設定(ドライブ)
インド
インドの経済成長は内需主導が特徴だが、個人消費だけでは牽引力不足だ。
米欧向け輸出が本格的に立ち直り、設備投資に勢いが出てくる必要がある。
今の個人消費を支えているのは昨年までの雨量に恵まれてきた(今年は雨不足)農家の収入増だった。
企業の投資意欲を高めるには高止まりしている貸出金利を下➘げるため、
政府は財政赤字縮小に取り組むべき。
財源には公営企業の株式売却を提案したい。
流通や金融分野の外資規制の緩和により、外国企業の対印投資を促進する必要もある。
(ラジブ・クマール・インド国際経済関係研究所所長09,7/9日経)
※貸出金利を下げる=政府の財政規律
ついでに言えば、日本ではかって池田首相が自ら海外に「トランジスタ」をセールスに回ったやうに、
米国も、中国も、もはや国の単位でなりふり構わず海外セールスに専念していることだ。
以下――
08,10月、<米印原子力協定>発効。
原発の増設はインドの経済成長の足かせになっている電力不足の解消に不可欠。
クリントン米国務長官は21日までのインド滞在中に、
■原発建設の受注の米企業への発注を取り付けた。
東芝傘下の米ウェスチングハウス(WH)と、
米ゼネラル・エレクトリック(GE)と日立製作所の合弁会社の受注が有力視され、
総額=100億㌦(9400億円)の大型案件になりうる。
中国
まず人口を利用し(賃金を、つまり労働分配率を抑えて=元安維持)、
世界の工場(労働集約から世界分業へ)の役割を→輸出圧力
→貿易黒字により外貨準備を溜め込んだ→次は
→「家電下郷」など政府に滞留したおカネを使って内需拡大に政策を振り向けている。
中国の金利政策は「適度に緩和的な水準」。
仮に中国で2ケタ近いインフレになれば預金金利(1年定期で=2.25%)は実質マイナスになり、
人々は資産防衛のために投資に走らざるを得ない。
中国では債券市場等まだ未整備、一部の不動産や株、商品に集中し、バブル(投機的)になりやすい。
しかし、中国では「多少のバブルは成長のためのコスト」とさえ見なされている。
※ブラジルと同じではないが、政府発「インフレ期待」政策→バブル
■貯蓄(資金)を社会資本整備や成長分野に誘導する仕組み。
ファンドやマイクロファイナンスや地域のNGOによるものやベンチャーキャピタルなど。
成長のためには、ファイナンスが必要となる。
ベンチャー企業の創出のために――
中国版ナスダック「創業板」、50-100社、上場申請へ。
26日から、「新エネルギー」「新素材」「生物医薬」「IT」「環境・省エネ」「サービス」
――の6分野を優遇する。
「創業板」を通じて新たなベンチャー企業の成長を促し、経済成長の新たなけん引役にしたい考え。
一方で、バブルは必ず不良債権をつくる。
金融が実体に回らず資産インフレを引き起こし、
生産増が需要拡大に結びつかないと最終製品の在庫が増大、
輸出圧力→ダンピング輸出という危険もある。
※すべてがありありと、間接金融であれ、直接金融であれ、個人の思惑であれ、
すべてが「利回り」に則っていることが感じられる。
ロシア
中ロの差が開いている。
なぜか。
ロシアでは単純なバブルが発生した。
そのいい例がロシアである。
安定した産業基盤、高付付加価値商品を作り出す前に人々はバブルに突っ込んだ。
これもゴーゴリ的ロシアの大雑把、気前の良さなのかもしれない。
①国内産業が資源価格の上で成り立っている
②外国からの借り入れで成り立っている
③資産バブルの上で成り立っている。
④産業などが「民意」でなく「官意」で成り立っている。
ラトビアなどの破産国家も同じ原因(②③)。
バブルは必ず不良債権化する。
構造改革が進まない産業はたちまち資金繰りに行き詰まり、
金融機関も資産の不良債権化でクランチする。
国は財政支援に乗り出し歳出増で財政赤字に。
→ルーブル安➘→株価安➘→雇用悪化➘→消費不振➘
※売るモノがあれば、ルーブル安でもいいが、ロシアは油、ガス以外はは輸出産業が育っていない。
中・東欧、ドイツ、英国などの景気はいかにして――
①資産価格上昇をテコに成長した英国やスペイン(住宅バブル崩壊→失業率18%)
②輸出が成長を牽引したドイツ
③西欧などの投資資金・マネーで急成長した中・東欧(→巨額の経常赤字を抱え資金流出で経済危機に)。
3層からなる欧州経済の複雑さが再生シナリオにのしかかる。
※何によって自らの国の景気、成長を図るか。その国のおかれている独自性によって・・・。
しかし、してはいけないのは、
・海外からの借金、であり、
・むやみやたらなバブルであり、
・外需依存一辺倒、のことである。
東ティモール
身の丈、といえばこの国ががんばっている。
東ティモール、2ケタ成長、今年も続く。
農業・公共事業がけん引。治安回復にも自信。
東ティモールは2002年にインドネシアから独立し、国連の支援を受けながら社会を安定させ、
08年には2ケタの成長を実現した。
「石油・ガスとコーヒーを輸出しているが量は少なく、
国際商品価格が下➘がっても悪影響は小さい。
08年の実質国内総生産(GDP)伸び率は=12.5%。
政府補助による農産品生産や公共投資の拡大がけん引している。
道路整備に毎年=約2億㌦(約190億円)を支出しており、09年も2ケタ成長が実現できそうだ」
※国家の初期の形成段階では、インフラと農業などの一次産業が中心となる。
治安――
「国連の調査では、政治的背景のない殺人などの国内の凶悪事件の発生率は
オーストラリアや米国よりはるかに低く、警察に対する信頼度も上がってきた」。
農村の貧困対策には――
「石油関連収入を基金として=50億㌦近く積み上げており、
これを使って08年初めから貧困層への現金支給を始めた。
低所得層や60歳以上の人など対象で、半年に一人=120㌦支払う。
長期開発計画も必要だが、スーツケースに現金をつめて配ることも大事だ」。
長期的な計画は――
「数年前はドバイがモデルになると思ったが、そのモデルは金融危機で崩壊した。
東ティモールと外国を結ぶ航空便が増えリゾート開発計画もあるが、
輸出や観光業に頼りすぎるのは危険だ。
力を入れるのは農業で、ニッチな商品を狙いたい。
有機栽培のコーヒーやバニラなどだ。肥料の使用が少なく、土が汚れないのが強みだ」。
30年近く東ティモールを支配したインドネシアとの関係は
「ユドヨノ現政権になってから両国関係は非常によくなった。
消費財の=70-80%はインドネシアからの輸入だ。
年内に両国の国境を自由に往来できるようにする」
(ラモス・ホルタ大統領、東ティモール独立革命戦線に関わる。
96年にノーベル平和賞を受賞。1949年生まれ。)
※世界的視野の中で自国の方向性、身の丈、使い分け、バランス、内と外と。
すべての根本には「利」があり。「利回り」で働いている。
国家のどこに「利」のドライブをかけたら一番有効に成長が促されるのか。
しかし、成長とともにそこに人権と、格差問題が絡まってくるわけだ。
中国ではとくに、それを人権問題とは捉えず、
沿海部の東と、内陸部の西の経済発展の中での経済格差の問題と捉えている。
日本は高度経済成長を過ぎ豊かさを手に入れた。しかし、それが幸せの実体でないことを知った。
韓国は今幸せを手に入れつつあるが、どうもそれに対して疑心暗鬼である。
中国はいま、豊かになれば幸せになれるとがんばっている。
まず貧困の解決が問題になっている。
世界も経済も常にその繁栄の場所を移転しつつ、
経済の循環も基軸も攻守も入れ替わりつつ回っている。
むろん、自由経済の中で、行き着くところの戦争であったり、
飢餓の発生、環境の破壊、貧困などの諸問題が世界全体として解決される限り、
どこの国が勝っても、どこの国が負けてもいいことには間違いない。