09,5/7(木)

の字のあらむ屋根の子燕の巣

雨の中をその賑やかなこと。この場合は「戀」の字だなやっぱり。


みどり雨いつまでといふ蔓の先

「蔓はどこへでも絡まっちゃうから難儀なんだわ」とば様は今日で3日目の雨の天気を嘆く。

大きな緑の意志、意力といふものを感じる。


燕墜つ窓真ッ逆さま緑りょく雨かな

なにしろまゐったが、なにしろ鳥たちはことのほか元気に飛び回ってゐる。


少し雨が途切れた。庭先に下りてみると見事なルピナスが咲き誇ってゐる。

おお、ルピナス、なんと云ふゴージャス

咎めることなきハーモニー

しとけなき露の朝に

鳥さへも賛嘆する


じい様の雨の合間のぐうちょきぱー花腐くたしする躑躅枝剪る

降り続いた雨がようやく止みそうである。

じい様は雨が小降りになるのも待ちきれず庭に出て、剪定鋏で躑躅の株をととのえ始めた。

剪定ばさみは「ぐうちょきぱー」。


惣菜の売り場に寄りし老人のさみしくもあり背中せなの一人す

スーパー・カワスミ、田舎のスーパーである。お客様は閑散として7,8割は老人である。

子供はたった一人、おばあちゃんに連れられて、

30代くらいの主婦らしき方が2,3人といったところか。

田舎は一体全体どうなっちまうのだらう。


もう少し大きいスーパー岡島も大苦戦だらうと思ふ。

夕方4時くらいに行ってこの客数。恐らく大量の廃棄物がでるだらう。

さうだ、ここで回転寿司屋をやればいい。

まず子連れを引き入れて、ついでにお買い物をしてもらう。

どうせ店内は無駄なスペースがあり過ぎるのだから。


夜更ける心とけゆくばあ様の昔話の面白き哉

「そいでもつておじいちゃんは挫折(だせつ)したことないだ」。

じい様は恥ずかしさうに首を振り、お見合いに振られたことをば様に告白する。

実名まで聞いてしまったとばあ様は「おっほっほっほ」──。

じい様はどうやらすっかりばあ様の手の内らしい。

山梨では「ざ」の発音が「だ」になってしまう。「だせつ」・・・。


能村登四郎

著莪剪りてわが不遇時の花と挿す

登四郎は「無限の自然の中に有限の人間が居るという矛盾が人間を詩人にする」と云ふ。

浴衣かけて農夫の午睡死のごとし


大牧広「父」

もう母を擲たなくなりし父の夏

父の日の高波のいつ衰へし


09,5/9(土)晴れ

櫛形や霧の衣をほしいまゝ

久しぶりにやっと晴れた。

田も畑からも百姓家からも見る見る水蒸気が蒸発していくのが感じられる。

櫛形山は朝まだき、陽の光の中でガスに取り囲まれて、

頂上のあたりは真みどりに、その上に真青な空が広がった。


義兄さんのSSの音がうがうと百姓をしに朝のまだきに

朝5時には消毒液をSSに満たして、4反歩の葡萄畑を目指して真っ赤なSSを運転していく。

きのうまで雨が降り続いたのでSSは棚下に入れず、

わたしがホースを手繰ったり、導いたりお手伝いをする。

薬はベト病と病害虫のため。


薔薇

薔薇の花がさゐた。まっ赤な薔薇の花だ。玄関の脇に二輪、朝はまだ露を含んでゐる。

「薔薇、おお、純粋な矛盾 よろこびよ

このやうにおびただしい瞼の奥で

なにびとの眠りでもないといふ」

リルケ(1875-1926年)


夕風や白薔薇の花皆動く(子規)

咲き満ちて雨夜も薔薇のひかりあり(水原秋桜子)


薔薇の樹に薔薇の花咲く、不思議なけれど――

薔薇ほどの きみ 唇の妖しめり

露のせて薔薇は剪られる待つをのみ


逝去

棋聖逝く磊落ていふ棋譜残し

藤沢秀行、5/8日、83歳。ときに大酒呑み。

「1年を4勝で過ごすいい男」といわれたほどだ。


送られて4万ていふ涙かな傷つきやすきバラの花咲く

青山の葬儀会場に4万の人たちが花を手向けに。

「愛し合ってるかい」の声が聞える。日本のロックに最初に肉体をもたらした。

本来はロッカーには嫌われるはずの先生が「ぼくの好きな先生」として歌われた。

忌野清志郎さん没。


一仕事おへたる安堵「家路」聞く

けふは6反歩ほど除草機をかけた。いささか草臥れた。

風呂に入ると足先がじんじんするほど気持ちがいい。

有線から「家路」のメロディーが流れてくる。


一っちゃんの遅きに失す一点の疚しさなしと緑いや濃し

民主党代表を辞任発表する。槐の樹の芽吹きもだいぶ濃くなってきた。