色素・色彩「見える」とは(齋藤勝裕「分子の働きがわかる10話」)
分子は光が好きです。光を吸収して色を作り、色々なエネルギーを使って光を作ります。
E(エネルギー)=hc/λ。
光速c=hν(ニュー)。
ラムダλは波長、νは振動数、hはプランクの定数。
「見える」というのはλ(波長)が関わっている(400-800nm)。
私たちが光として感じる可視光=波長(400-800nm)の狭い範囲の電磁波だけです。
波長がそれより長いものは赤外線と呼ばれ、
熱として感じることはできても、眼で見ることはできません。
それよりさらに長いものは電波となります。
可視光より短いものは紫外線であり、
それより短いとレントゲンに使われるX線(高エネルギーで体に有害)となります。
さらに短いとγ線となり、命を奪う危険な放射線となります。
電波―赤外線―可視光(800-400nm)―紫外線―X線―γ線
光は電磁波です。
したがって電波と同じものであり、横波であって波長(λ)と振動数(ν)を持っています。
光のエネルギーは、光速をc(=λν)とするとE=hν=hc/λであらわされ、
振動数に比例し、波長に反比例する。
このときのhはプランクの定数といわれる定数です。
光のエネルギーが→色に転換される→感光細胞(3種類の錐体細胞)
色彩は物質と光の相互作用。
色素(しきそ)とは特定波長域の可視光を選択的に吸収し、
これにより色覚をおこさせる化合物をいう。
眼の色を感じる質的差=色覚(見えるということ)。
※3種類の錐体細胞で起る興奮の割合を脳で総合的に判断して色を認識する。
異なる波長の光、またはその混合によっておこる視覚の質的差をいう。
ヒトは太陽光線スペクトルのうち
約800~400ナノメートルの波長の光線を見ることができ(可視光線)、
波長の範囲に応じて大別して約7種の色を感じることができる。
すべての物質は色を持っている。
そして、すべての物質は分子でできている。
物質の色は分子の色ということになる。
色彩は物質と光の相互作用である。では光とは何か。
赤いバラの花がある。バラが赤く見えるのは昼の間だけで、
夜になれば赤が見えなくなるどころかバラそのものも見えなくなる。
バラは光がなければ色もなくなってしまうことになる。
※光(可視光)→発色「色」
ネオンが赤く見えるのは赤い光を出しているから。
希ガス元素といわれる元素の一種であるネオンNeの気体に電気エネルギーを与えると、
ネオンが電気エネルギーを光エネルギーに変えます。
バラは光を出していないけれど、バラはなぜ赤いのか。
それにもかかわらずバラが赤いのはバラが光を吸収しているからなのです。
※光を「吸収」するとは→自由エネルギーを獲得することで
→自由エネルギーが→光エネルギーに変わる。
※光エネルギーが可視光に対応している場合に「見える」ということになる。
「見える」というのは可視光が「眼に入る」ということ。
眼に色覚を起こさせる。
色は光のエネルギーに関係する。
★「青いバラ」(田中良和・サントリー植物科学研究所09,3/29読売新聞)
青い花をつける植物が持つ色素の酵素に着目し、
この酵素を作る遺伝子をバラに入れてみた。
だが、バラの花は咲いても色は元のまま。
2年かけて、10種類以上の植物の遺伝子を試した。
その結果、パンジーの遺伝子をバラに入れると青い色素
(色素/可視光によって励起される2重結合を持つ分子)ができることがわかった。
※二重結合[H-(CH=CH)n-H]
※化学では原子を物質の構成要素と考え、
化学変化は、構成要素である原子の組み替えによっておこるものであるから、
化学結合は原子に属する電子の相互作用によるという考えである。
※「色素」可視光を吸収する発色団を持つ分子・長い共役二重結合「H-(CH=CH)n-H」(分子)
※「共役結合」いわゆる二重結合を持つ分子の連なる個数によって吸収する可視光の波長域が決まる。
※共役二重結合が6個くらいで、波長域=360nmを吸収
→色相環の反対側、かろうじて薄黄色辺りが発色する
※赤の波長域を吸収すると、反対側の緑色が発色する
※青、青緑を吸収すると、反対側の赤色が発色する
ただ、もともと赤いバラに青の色素を作らすことができても、見た目は黒ずんだ赤。
今度は白や薄紫のバラに遺伝子を入れてみた。
2002年、実験用温室でついに青く咲くバラを見つけた。
「青いやないか」そのものずばりの社長の評価。
だが「まだ紫がかった青だ。突き抜けるような本物の青を実現したい」と、田中良和氏本人。
★漂白
衣類についた黄色いシミや汚れも、
長い共役二重結合「H-(CH=CH)n-H」(分子)のせいと見ることができます。
従って、このような二重結合を酸化や還元で切断すると共役系が短くなり、
可視光線を吸収しなくなる(吸収光は紫外線以下となる)から無色となるのです。
これが酸化漂白、還元漂白の原理です。
物事の実相は、美しくもなければ、醜くもない。
実もなければ、虚もない。
美醜や虚実を分かつことで、世間があり、「私」ってやつも生じる。
そういった世間や「私」からはぐれ出し、物事と直面する。
実相を見るとは、物事を、のっべらぼうに見ることだ。
(古井由吉『山躁賦』について)
人間の体をつくっている分子は、
食べ物として取り入れられ、身体の一部になり、時間がたつと体外に出てゆく。
物質は移ろいゆくが、そこには同じ生命がある。
私たちの身体は変わりつつ、かろうじて一定の状態を保っている。
シェーンハイマーは、この生命の特異的なありように「動的な平衡」という素敵な名前をつけた。
分子が入ってきて、また分子が出てゆく。
透明な体のなかに命がゆれている。
(福岡伸一著「動的平衡」)
是諸法空想/不生不滅/不垢不浄/不増不減――
ただ入って、出てゆくだけ。
★見る「写実」の系譜
フォンタネージは西洋画を教えるために来日。
1876年より2年間、工部美術学校で教えた。
門下には浅井忠、小山正太郎、松岡寿らがいる。
小山が開いた私塾不同舎で、中村不折は小山や浅井に学んだ。
青木繁や坂本繁二郎も同窓である。
フォンタネージがデッサンや写生や遠近法などを弟子に教えた。
中村不折から「写生」が正岡子規に伝わっていく。
(有馬朗人・物理学者・俳人09,3/21日経)