植物言語と心(野田道子「植物は考える生きもの!?」)
植物は21億年を生きてきた、
それはとても生易しいものではなく言葉では言い表せないほど過酷なものだった。
成長の最大の目的は子孫を残すこと。
さまざまな成長戦略が生まれ、棲み分けと、個々の間の安全保障や、選択淘汰、進化が促された
★植物には目がある「情報」センサー
植物は、発芽、成長、開花、結実、休眠などのほとんどを、光からの情報によって行う。
その光からの情報をキャッチするセンサーが、(フィトクロム)といわれるものである。
フィトクロムには、赤い光を吸収するものと青い光を吸収するものがある。
フィトクロムが▶赤を吸収すると、
「光が来た」ことを葉緑体を作る遺伝子に伝達、
遺伝子はそのサインを受けると、葉緑体を作る。
いわばフィトクロムによる「GO」サインというわけである。
植物は赤い光の来た方向に伸びていく。
一方、フィトクロムが▶青の光を或いは緑色を吸収すると、
「待て」というサインが出される。
植物はその方向を避けて伸びていく。
いまのところ、光からの情報をキャッチするフィトクロムがわかっているだけだが、
植物にはこのほかにも水分や温度、大気の出す成分や土の中にある科学物質、
それから重力や電磁気、地震の震動などという
さまざまな環境情報をキャッチするセンサーが備わっていることが予想される。
どんなものでも調節するときには、二つの装置が必要、
つまり「ON」「OFF」のスイッチが作用するのだ。
フィトクロムは、植物におけるこのスイッチを切ったりつけたりする、成長の司令役ということになる。
フィトクロムが周囲の▶緑色をセンサーすると、植物は上へと延びようとする。
植物たちは自分の命を守るためにお互いに譲り合っているのだ。
植物における成長とは、根と葉における成長点(先端部分)の存在と、
その中間部分の輸送路「篩管や導管」(茎や幹)のことである。
輸送路が老化すると植物は寿命が終わる。
この輸送路の部分が大きく発達すると植物は長寿になる。
★植物のiPS細胞(初期化)
植物は移動が制限され、命の危険に常にさらされて(風雨など天変地異)いるわけだが、
植物は動物に比べて長生き(屋久杉は3000年)なのは、
植物の命の仕組みとして、
すなわちどの細胞も、どの部分も必要によっては時として、主役になれる(クローン)からである。
むしっても、千切っても、或いは接木をするとそこからまた新たに成長が始まる。
植物は、どの部分がなくても、その個体の生きる道は残されているのだ。
★カタクリ
片栗は春に先がける。
ほとんど他の植物がまだ冬ごもりの最中に落葉樹の下から芽を出し、
邪魔されることなく光を一気に吸収して、成長し、花を咲かせ、受粉し、タネをつくり、
おまけに余ったエネルギーを根に蓄えもする。
光の情報を=100%取り入れフルに利用した独特の生き残り戦略なのだ。
いかに手際よく、わずかな時間で。
また片栗のタネの突起の部分を「エライオソーム」と呼ぶが、
やわらかく水気が多くアリがその部分を喜んで吸う。アリは自分の巣の中に運び込むのだ。
★アレロケミクスとアレロパシー
自分の気持ちを植物や動物に伝えるために出す物質を(アレロケミクス)といい、
他の植物に与える作用を「アレロパシー」という。アレロケミクスは植物の言葉の一つだ。
クログルミ
黒グルミの葉が落ちる
→微生物がこれを分解する
→ジュグロンという毒ができる
→雑草を抑え、虫を寄せ付けない。
「近づいて欲しくない」
ウルシ、トリカブト
かぶれる。「近づかないで」という気持ち。
トリカブトのように根に毒をもっているものもある。
セイタカアワダチソウ
北アメリカ原産、菊科の植物。
「そこをどきなさい」という気持ちをポリアセチレンという言葉で他の植物に伝える。
日本にある古来種はその言葉にすごすごと引き下がった。
ところがポリアセチレンは効き過ぎてセイタカアワダチソウは自家中毒を起こしてしまう。
ススキやオギ、クズなどがその後元気を取り戻す。
じゃがいも
連作ができない。アレロケミクスは火に弱いという性質がある。
毒の力をゼロにするには焼き畑農業が有効なのである。
リママメ
リママメはナミハダニに食べられると、「タスケテ」と悲鳴をあげる。
ある匂い(ベーターオシメンとジメチルノナトリエンという物質)を出して
ナミハダニを食べてくれるチリカブリダニを呼ぶのである。
おどろいたことにさらに、この仲間の警戒信号
「危ない、気をつけなさい」に周りのまだ食べられていないリリマメも同じ物質を出す。
マカランガと安全保障
熱帯植物のマカランガ(オオバギ属)は、アリ植物と呼ばれている。
アリを住まわせて、そのうえ、アリに栄養分(エサ)を与えている。
そのかわりにアリはお礼にマカランガの木の上でガードマンを務め、
ケムシを追い出したり、カイガラムシを食べたり、
ときに播きついたほかの植物の蔓を食いちぎったりする。
もう1億年ものお付き合いになる。
胡瓜、レモン
熟していないと苦い、酸っぱい。「まだ食べないで下さい」の信号。
殺菌効果があるこの植物の言葉は、つよい香りがする。
子孫を残していくためには十分に熟す必要があるからである。
★生体電位
動物にかぎらず、植物もそのからだは、細胞からできている。
われわれは「生体電位」を持ち、細胞は、いわば、電池の役割をしている。
生物の体の中には、ごくわずかの電気があり、
もちろん人間の体にもごくわずかだが電気がある。
生体電位は外の環境に反応する。
刺激を受けたときの生体電位の差を観測すると植物の言葉がポリグラフのように現れる。
▶元気をなくしたり、
▶溌剌としたり(モーツアルトと酵母。酵母は機嫌を損ねると渋みやエグミを出す)、
▶嘘をついたり(オジギソウの死んだフリ、擬態する捕虫植物)する。
導管と篩管は(無機イオンや水や養分)を運ぶほか
生体電位(信号、情報を)を伝える。
異常を感じたオジギソウは、体のほかの部分に、
この電気の強さ「生体電位」の変化で信号を送る。