■GMの金融子会社がローンを証券化しウォール街に
SUVの大型車を主流とするGMは1997年頃売り上げの底にいた。
起死回生の反転を可能にしたのはGMの子会社の金融会社GMACである。
自動車ローンを担保に証券化商品を仕立て上げ、それをシティなどの金融機関に持ち込んだ。
空き缶を拾っていたような人まで車のローンを組めるようになった。
名前、生年月日、住所、勤務先、国民ナンバーの5項目だけ記入すればよかった。
収入、返済方法などの記入はない。
かくして大手の金融機関はGMACの証券化商品を世界に「安全、おいしい」といって売りまくった。
自動車の“サブプライムローン”である。
ここに今度は03年頃に自動車のリース・システムが加わる。
お客さまは2年ごとに新車を手にすることが出来るようになった。
GMACはリースの証券化商品を作り出した。
ウォール街の金融工学と米国の自動車会社とその子会社の金融会社が一緒になって
あやしいスパイラルを駆け上がって行ったのである。
だが、実体のないものは必ずはじける。
サブプライムショックとともに、自動車の売り上げが急降下、自動車ローンは焦げ付き、
差し押さえが急増したのである。雪の中をレッカー移動される車の映像が映し出される。
米国では今7台のうち一台がこうやって引っ張られていってしまうという。
膨大な在庫車がしんしんと降る雪の中に並んでいる光景にあらためて慄然とする。
■大手自動車の部品会社・オートキャムの場合
オートキャムはデトロイトにある。GMなどの大手自動車会社の部品会社だ。
「これは大変なことになる」と生産部門責任者のカール・クーパーは顔を赤面させて云う。
やがて、GMなどからは発注差し止めの報せが続々届いてくる。
人員整理と、資産売却リスト。苦渋の会議。
もはやSUVの流れ、ガソリン車の流れは止まったのだ。
化石燃料依存の社会が明らかに転換しつつあった。
この後、カール・クーパーらは会社の微細技術をメディカル医療分野に転用する方向に。
■投資家ウィルバー・ロス(資本+技術→次世代の産業構造へ)
ガソリン車から電気自動車へ。中国上海でのモーターショウ。
世界的投資会社の会長ウィルバー・ロスは愛知県のインパネ製造会社「三ツ星」の社長を連れて
専用ジェット機でやってきた。
三ツ星はトヨタなどからの発注が急減していた。在庫が積みあがっていく。
いくつものラインを止めなければならない。
ロスの投資会社は三ツ星の大株主でもある。
ロスは三ツ星の社長に社員のリストラを厳しく迫る。
一方で、プラスチック・インパネの製造の将来の有望性を
中国の現場で三ツ星社長に指摘するのだった。
ガソリン車の=3万もの部品に対して電気自動車は=1万の部品で済むようになる。
とくに電気自動車の場合は熱を持つ部分が少なくなるので、
プラスチックのインパネ部分が相対的に増えることになる。
三ツ星のコンソール・ボックスなどの高い技術がさらに生かされることになるのだ。
車体の軽さはそのまま燃費につながる。
ウィルバー・ロスはさらに、既存の大手の自動車メーカーと
その傘下に連なる部品会社との連携・繋がりを壊そうとしているのだった。
大手自動車メーカーから離れた部品会社を資本で結びつけ、
逆にメーカーに対しての価格決定の主導権を握ろうと考えている。