09,1/3(土)大雪降り
越後では憂きこと積もる雪となり
外は雪めでたき音も三が日
虫出でてあゝすっきりと年初め
黒い6,70㌢の黒い数珠状の虫が飛び出て、すぐに白っぽい小動物がその上を襲い、
かの虫の頭を捉えた。虫は尻を時どき振り回すが、もう大人しくしているしか仕方がないようだ。
隣人のカップルが無関心にその様子を横に眺め、いつの間にか部屋から出て行った。
鳴り止まぬ拍手しばらくラデッキーいや頻しけ吉事よごとワルツは回れ
ダニエル・バレンボエム指揮で、ウィーンで恒例のヨハン・シュトラウスを。
最後は「ラデッキー行進曲」を。手拍子が鳴り止まない。
ガザはまだ爆撃されている。国家とは、
あるいは国家と云う存在の是々非々を考え直さなければならない。
玉せゝり水の冷たき温かき
ふんどし一丁の男子らは木の玉を奪い合う。
その裸体の男子らに盛んに見物客から水がかけられる。
裸の男たちからは湯気が立ち上がる。
奪い合った木の玉は宮司さんの手に渡って神社の奥深くしまい込まれる。
すべらかし紅白でする初カルタ京都八坂神社か。
三が日過ぎれば熟なれる日和かな
「heaven is here in our life」、
85歳になったベスはそう云う。「私たちが人生で経験することの中に天国はあるわ」
「生きているうちに私は天国を見つけなくてはならない」。
ベスは鼻眼鏡でインタビューに答え、あるいは庭に、畑に出て指示する。図面は一切ない。
ガーデナーとしてのベスはガーデニングに対して道徳的であるかどうかを考える。
植物のストレスと水道局とのかかわり。私は植物には水を与えない。
植物のストレスは刈り込むことでやり過ごそうとする。
でも、地面が乾ききり、死んではいないがこれ以上ないくらい
萎んでいる植物を見ると気持ちが揺れ動くの。
90歳になった夫は亡くなった。わたしは今、猫と思い出と一緒に眠る。
でも、すぐに森や木やあの植物や、あの菜植などと次から次へと
やらなければいけないことやアイデアが浮かんでくるの。
自分で自分のことが出来なくなったら、そんなことは考えられないわ、
と云いつつ、そうなったら、実が落ちる植物のように、
枯れて朽ちて葉が落ちるように、この庭で眠るように死んでいけたらいいわね、
と微笑みながらベスは云うのだった。
09,1/4(日)朝方雪霽れる、のち昼ごろよりまた降り始める。
正月や空飛ぶベラの夢みごろ
闇には刃物が隠されてゐる。街区の底は暗く危険があちこちに隠されてゐるのだ。
光る刃物は悪意そのものだ。それがなぜか、どうしてそれにつけ狙われるのか分からない。
そして、私は夢の中で空を飛べることになってゐる。
少女を抱きかかえるようにして軒の下にホバリングしたり、屋根を低く飛び越えて行ったり、
時に連れ込み宿にゐたり、劇場や、レストランの厨房の裏口にもゐたりする。
彼女はあどけなく、薄物を身に着けていた。
少し痛々しく、それが私に対する誘いなのかもしれない。
彼女は空に住んでいた。バルーンを空に浮かべ、
その下に揺り籠のようなバスケットを吊り下げ、
バスケットの中は赤い布できれいに内に包んであった。
普段はそこに身を滑り込ませるようにしてゐるのだが、
どうやら彼女も何かに追われてゐるやうなのだ。
けっきょく私の首筋にすがるやうにぶら下がり、ふんふんと鼻を鳴らす。
私は彼女に誘われるやうに連れ込み宿に入っていった。
書割のやうな街区を飛び越え飛び越え、
暗がりにまぎれて連れ込み宿の2階の窓から忍び入った。
赤い少女好みの布団が敷いてあった。
雪はれて鍋底掬ふ粥の朝
正月は毎日鍋が続いた。鱈、トンしゃぶ、鶏すき、・・・。スープが残った。
さっぱりした味はいである。上越名物「寒ズリ」を入れていただく。
寒ズリはここいらの寒冷地でつくられる唐辛子の醗酵調味料である。
寒くないとうまく醗酵仕立て上げられないのだ。
ひと口、ふた口、・・・飽きてきたころ赤い寒ズリを粥に少し置いてまぶし、
その辛うまい粥を一気に胃袋へ落としやる。
この辛旨さは北国独特の風合い、しかもまぎれもない和国の味はいである。
長い冬の知恵をとことん感じるのである。