★「量的緩和」→「マネーの増大」
■量的緩和とバランスシート
FRBのバランスシートは急拡大し、9月のリーマン・ショック前の=2倍超に達している。
これは「量的緩和期」の日銀と同程度がそれを上回るペースである。
だが米国の目下の政策は、住宅ローン担保証券の購入など
FRBのバランスシートの資産側に重きを置いており、
負債側の増加は資産側の変化がもたらす結果に過ぎないという説明がなされている。
⇒米国は、政府機関債や住宅ローン担保証券(MBS)の購入や、
自動車ローンや中小企業向けローンなどを裏付けとする資産担保証券(ABS)を
担保とする融資を通じ、流動性の足りない市場や企業、金融機関、家計に対し
的確に(ピンポイント)資金を届けようとしている。
日本の量的緩和と比べ、効率的で優れている。
だが、同時に米国の方法では、どこの誰に資金を届けるのか、
中央銀行自らが深く関与する必要があり、政治的な困難を伴う。
そうした困難は、危機が一段落し膨張したバランスシートを元に戻す局面でも高まるだろう。
(渡辺努・一橋大学教授08,12/23日経)
■日銀の量的緩和はバランスシート「負債側」を
日本の量的緩和が日銀のバランスシートの負債側にある当座預金を増加させることに
力点があり、そのため何を買うのかという資産側はあまり強調されなかったのと対照的だ。
⇒日本の場合、あくまで「市場」への資金供給で、
供給された資金がどこにどの程度回るか基本的に市場に委ねられた。
(渡辺努・一橋大学教授08,12/23日経)
■F・ルーズベルトの「金融緩和政策」
政策の「目標変数」であるインフレターゲティングもそうだが、
さらに進め物価水準ターゲティング採用も検討に値する。
米国では大恐慌期。
「恐慌前の物価水準を回復するまで積極的な金融緩和を続ける」
との声明をルーズベルト大統領が発表した。
これが企業や家計の心理を変え、恐慌脱出を可能にしたとする見方もある。
(渡辺努・一橋大学教授08,12/23日経)
■ゼロ金利と「流動性のワナ」の下で
ゼロ金利下で銀行が本来の機能を発揮できない(「流動性のワナ」)と財政の役割が重くなる。
実際、米政権は金融と財政を含む経済政策を総合的に運営する体制を整えようとしている。
日本の90年代後半にも財政が出動されたが、
今回の米国では、当時の日本になかった経常収支赤字の問題がある。
財政発動は経常収支の更なる悪化を招き、ドル需要を減らす可能性がある。
(渡辺努・一橋大学教授08,12/23日経)
■量的緩和と政府の円売り介入
量的緩和期の日本では自国通貨安の心配はなかった。
むしろ積極的に自国通貨を下落させる努力がなされてきた。
2003-04年の時期の政府による大量の円売り介入が、
マネー供給の増大というかたちで日銀の量的緩和を支援した。
この点での日米の差は大きい。
(渡辺努・一橋大学教授08,12/23日経)
■金融緩和・財政出動とエグジットポリシー(出口戦略)
95年からは金融緩和を10年以上続けた。
大規模な財政出動によって一般債務が膨らみ、身動きが取れない事態に陥った。
危機に際しては緊急避難としての対応は必要だが、
明確なエグジットポリシー(出口戦略)を持たずに、
ゼロ金利政策などの極端な政策に乗り出すのはリスクを伴う。
誰がどう責任を取るのか。対策の範囲をどこまでとするのか。
政策で対応できるのは「火消し」にとどまる。
ある程度まで政策で対応したらあとは市場経済メカニズムに委ねるべきだ。
(斎藤誠・一橋大学教授08,12/27日経)
■為替・円安バブル
06年以降は実力以上の恩恵を受けていたといえる。
輸出主導型の日本経済にも円安バブルが生じた。
■GMの「ゼロ金利」(08,12/27日経)
実需を超える販売を無理して続けてしまった。
FRBが低金利政策をとった02年ころから高価な大型車を「ゼロ金利」など
実質的な大幅値引きで売りまくった。
「後から考えると、緩すぎる基準で自動車ローンを提供していた」
(リチャード・ワゴナーGM会長)→代償は新車価格の下落と収益力の低下。
過剰な設備と過剰な人員。
■GEのイメルト会長(08,12/27日経)
米企業全体がバランスシートの修正に入った。金融収縮と需要減退。
GMのイメルト会長は「背伸びの経営」(肥大化した金融事業縮小へ)から
「自力による成長」に経営目標を置いた。
■人口構造とその国のGDP(一直08,12/27日経)
一国の経済力はその国の人口構造と密接に関連している。
生産年齢人口が需要と供給の双方を拡大していくからだ。
■経常収支の黒字「円高説」(一直08,12/27日経)
経常収支の黒字→円高説。
企業の貯蓄超過を主因に日本経済全体の貯蓄超過構造は大きくは変わらないだろう。
したがって経常黒字は続く。
だが人口減少に入った日本は定常化社会→金利も低水準で推移するだろう。
蓄積された資金は成長地域に大きな流れとなって還流していくはずだ→円安へ
■国際収支「経常黒字」
イギリスは大英帝国と呼ばれた時代に今の日本と比べ物にならない
膨大な経常収支の黒字を出している。
その黒字を対外投資に使って大英帝国のみならず世界中に資本を提供した。
資本の余っている国が資本を供給して世界全体が発展するのは自然である。
(小宮隆太郎08,12/27「私の履歴書」)
■「前川リポート」と経常黒字
前川リポートは「経常収支の黒字を減らす」一方で「対外援助を増やそう」と言う。
だが、対外援助をを増やせば経常収支の黒字は増える。
国際収支の複式簿記を理解していないのだ。
金森久雄氏は「前川リポート」が必ずしもその後のバブル経済のもとを作ったというのは
正しくない、と言うが、私は日本の黒字を減らすための放漫な金融政策や、
<日米構造協議>で政府が対外公約した「公共投資=430兆円」が
バブル経済の背景になっていると思う。
中曽根康弘首相が「恭順の意」を示すためにレーガン大統領に持って行った。
「前川リポート」は日本の黒字は、自動車の輸出を減らし、
石炭の輸入を増やすことで部分的に直せると考えている。
国際収支に関するマクロ経済学をまるで理解していない。
次に「経常収支の黒字が申し訳ない」という発想だ。
■景気刺激策「金融政策・財政政策」
景気は総需要調整策(需要と供給の双方の拡大)として金融政策と財政政策がある。
しかし金融政策では政策金利がゼロになると総需要調整策(景気刺激策)としての
機能をほとんど失う(流動性のワナ)。
日本の場合、98,99年次ころ「貨幣的現象」(金融市場の信用収縮)にもかかわらず、
金融政策と財政政策がこれを肩代わりし膨大な負債をこさえてしまった。
日本では、1998年まで、特に支払能力強化策としての(公的資金注入)金融機関救済と
破たん処理の制度が整っていなかった。
(田中隆之・専修大学教授08,12/25日経)
■経済循環(景気)とバランスシート
経済循環=
景気(金融政策・財政政策)
+信用秩序維持政策(流動性「資金繰り」対策と支払能力強化策)つまり「血流」。
資本主義は信用で成り立っている。
信用秩序の収縮とはバランスシートの左の資産の
流動性枯渇(資金繰りを支えるリクイディティー)と
右側の支払能力不足(ソルベンシー対策)の同時性により引き起こされる
信用供与の破綻である(クレジット・クランチ、キャピタル・クランチ)。
「景気」はモノの売り買いの循環、「マネーの血流」は信用秩序(金融機能)を維持する。
「左側」は経済活動、「右側」は元手(資本の部)。
(田中隆之・専修大学教授08,12/25日経)
⇒FRBは「左側」に、財務省は「右側」に注力。
(田中隆之・専修大学教授08,12/25日経)
■日銀の量的緩和(01,3-06,3月)
日銀の<量的緩和政策>には、政策金利がゼロ%の状況下でも、まだゼロになっていない
長期金利を何とか引き下げて景気を刺激しようとする要素が三つあった。
①デフレ脱却まで量的緩和を続けることをコミット(約束)するという
政策コミットメントによる「時間軸効果」だ。
⇒「金利の期間構造に関する期待仮設」によれば、現在の長期金利は=
現在の短期金利と将来の各時点の短期金利の予想の平均値に等しくなる。
この約束は、将来の政策金利がゼロに据え置かれるという市場の予想を形成するから
→長期金利を引き下げる。
②長期国債の買い入れ増額。→買い切りを行うことで長期金利の低下を促すことができる。
量的緩和政策採用前は月額=4000億円は、
増額が繰り返され→1兆2000億円まで膨らんだ。
③当座預金残高の増額、それによる超過準備の拡大。
これによって期待されたのが「ポートフォリオ・リバランス効果」である。
日銀の資金供給拡大で準備預金残高が増えれば、
銀行は利子が付かない準備預金を取り崩して→貸出や有価証券投資に振り向け、
同時に貸出金利や国債利回りなどの中長期金利も低下すると考えられた。
同残高は当初の=4兆円から→30-35兆円まで増額された。
(田中隆之・専修大学教授08,12/25日経)
⇒しかし、市場を通じて資金を必要としている場所に資金が届いたかどうか、
その効果は不明である。