■時価会計凍結に対して
1980年代に米貯蓄金融機関(S&L)が含み損を隠していたため、
損失の発見が遅れ、米国でも議論になった。
時価会計ルールの凍結には反対だ。
経営者が一方的に保有証券の価値をはじき出すよりも、
複数が取引した価格の方が証券価値の情報が詰まっている。
時価会計は流動性にも影響を受ける。
時価会計は売買価格(価値は複数の情報)を反映する。
仮にある金融機関がロビイングしたとしよう。
その金融機関は結局投資家から非難され、緩和ルールの適用を断念した。
(ロバート・ハーツ・米財務会計基準審議会(FASB)議長08,12/20日経)
■マルクス経済学と資本主義
例えばマル経への答案はこんな風に書ける。
「資本主義国家の財政は一般大衆を搾取して利潤を増やす仕組みであり、
大衆課税によって支えられている」
「資本主義国家の労働政策・社会保障は国家総資本の利益のために行われている」
「帝国主義とは、労働者の搾取により国内市場が狭隘きょうあいになって、
後進国に資本が輸出されるために出現する」
(小宮隆太郎・日本学士院会員08,12/21「私の履歴書」)
■中銀と「マネーサプライ」
政府系金融機関がCP買い入れに熱心なのも変である。
こうした政策は債権の持ち主を変えるだけだから、効果はほとんど期待できない。
米連邦準備理事会(FRB)がCPを買い入れているように、
これは本来マネーの総量を変えられる日銀の役割である。
(カトー08,12/17日経)
■サハリンプロジェクト一段落と「余剰労働力」
日本の北方四島を行政区域とするサハリン州は、
領土返還にモスクワの政府より厳しい態度を取る。
経済、文化、人的交流を議論。
巨大エネルギープロジェクトであるサハリンⅠ、サハリンⅡの建設段階が終わって
サハリン経済は陰る。余剰労働力の吸収が課題となる。
■ビッグ・3、再建協議と株式
GM、クライスラーの再建協議で、無担保債務の3分の2を株式化することや
労務費の削減などが柱となる。
一つは既存債務の削減。
政府は無担保債務の3分の2を株式に転換することを求めている。
実現すれば財務は好転するものの、
再建に失敗すれば無価値になる株式への転換には
債権者の反発も強いとみられる。
■全米自動車労組(UAW)の「医療保険債務」と株式
2010年に全米自動車労組(UAW)主導の基金に医療保険債務を移す際、
米三社は=100億㌦規模の資金を拠出するが、
半分を株式で出すという条件も盛り込んだ。
■「銀行等保有株式買取機構」
1990年代後半からの日本の金融危機の際に
政府が資本注入した公的資金は総額で=12.4兆円。
政府は2008年度の第二次補正予算案に=33兆円の<金融安定化策>を盛り込んだ。
銀行や事業会社の保有株式の受け皿となる「銀行等保有株式買取機構」の
買い取り再開用の資金枠を過去の=2兆円から→20兆円に大幅増額。
<金融機能強化法>の予防的公的資金注入枠も=10兆円増額の→12兆円にする。
■金融自由化「ワンストップ・ショップ型」
98年シティグループの誕生「ワンストップ・ショップ型」川上から川下まで。
例えばメリルリンチやリーマン・ブラザーズなどは
証券会社なのに住宅ローン会社も経営しており、
グループで融資したローンを証券化するという「川上」から
投資家への販売という「川下」までを一貫して手がけた。
米国では80年代から90年代にかけて、
それまで商業銀行に禁止されていた株式引き受けなど証券業務を解禁。
証券引き受け、市場取引、融資など幅広い金融業務を提供する
「ワンストップ・ショップ型」は98年のシティグループの誕生でウォール街の定番となった。
■<グラム・リーチ・ブライリー法>
99年<グラス・スティーガル法>の撤廃など規制緩和が追い風となり、
銀行は証券の引き受け販売、証券会社はローンが容易になった。
企業の資金調達コストが下がり、融資を受けにくかった個人も住宅取得が可能になった。
金融自由化が進んだが、しかし行政組織の垣根が残って規制の網が行き届かなかった。
とくにデリバティブ(金融派生商品)など新しい金融商品に対応できなかった。
こうした新しい商品はSECやCFTEC(米商品先物取引委員会)の管轄外。
リスク保証業務(CDS)市場を担当する省庁はない。
しかも保険会社の財務監督局は州政府単位で、
国内外で事業を展開するAIGの経営やリスク管理を
一元的に日々監視する組織が米国には存在しなかった。
■ノルウェー政府系ファンド
「この1年、日本株投資は拡大しており、今後3,4ヶ月は買い続ける」
「これまで手掛けなかった新興国の株式運用を7月に始めた。
資産の=5%を世界の不動産に投資するため国債を売却して
=約200億㌦(約1兆8000億円)を用意し、投資タイミングを待っているところだ」
(ユング・スリングスタ・ノルウェー政府年金基金CEO 08,12/23日経)
◆ノルウェー政府の石油収入を運用するファンド。
資産規模は9月末時点で=約27兆円ですべて海外市場で運用している。
07年に政府は株式比率を=40%→60%に高めるなど
高リスク運用の拡大方針を決めた。
■低金利
近世の記録に残る最低の長期金利は1619年にイタリアのジェノバでつけた年=1.125%という。
ベネチアと並ぶ中世からの海洋都市国家で、16世紀半ばに欧州の金融センターになり、
歴史家ブローデルが「ジェノバ人の世紀」と呼ぶほど繁栄した。
⇒新大陸の大量の銀が、スペインを通して流れ込み、
ブローデルは「イタリアでは『気前の良さ』が頻繁に繰り返され、
場合によっては命取りになる・・・<おびただしい貨幣>があふれ、
これが数多くの計算を欺くのである」(浜名優美訳「地中海」)と書いた。
バブルのようなこともあったのだろう。
超低金利が象徴するあり余る資金の投資先が国運を左右した。
斜陽のハプスブルク家のスペインに貸し込み債務不履行をくらった
のが決定打になり衰退した。
昨今の金融危機の原型を見るようだ。
(土谷英夫、本社コラムニスト08,12/22日経)
■価格革命
ジェノバが栄えたころの欧州は一方で「価格革命」が起きている。
イタリアなど先進地域の地中海世界と、
英、独、仏、東欧などの新興国の市場が一体になり、
小麦価格などが=7,8倍になったという。
(土谷英夫、本社コラムニスト08,12/22日経)
■外貨建て依存
中・東欧では国内の高い成長率を維持する一方で、
低金利の外貨建て融資が過剰消費の温床となった。
インフレ抑制のために中銀が高金利政策を進めた結果、
先進国の余剰マネーが流入、多くの国で経常収支が悪化し、
金融危機にもろい経済構造になった。(桜庭薫ウィーン08,12/22日経)
■スロバキアとユーロのペッグ制
08,7月から通貨コルナをユーロに1ユーロ=30.126コルナで固定。
スロバキア中銀はユーロ導入に備え、
欧州中央銀行(ECB)の政策金利水準に収れんするする金融政策を進め、
インフレを抑制。ユーロ導入準備で財政赤字削減に取り組んだ結果、
今のところ金融危機の影響は限定的だ。
政府も企業。国民に不人気な社会保障制度の改革を断行中である。
09,1月、欧州単一通貨ユーロを導入する。
※例えば過度の財政赤字→インフレへ。
(桜庭薫ウィーン08,12/22日経)
■国際収支累積黒字と円安と「インフレ輸入」
68年以降、日本の国際収支の黒字傾向が顕著となり、
71年に入って黒字の累積と円切り上げプレッシャーは増大していた。
政府、金融界、産業界にとって円切り上げはタブーで労働組合も野党も同じだった。
69,11月に東大経済学部教授になっていた私は、日本が外国からインフレを輸入
することを防ぎ、世界的な国際収支調整にも寄与するので、
円レートを切り上げることが望ましいと考えた。
71,7/10日、近代経済学者有志36人で構成する「為替政策研究会」は
「クローリング・ペッグ」(小刻みな調整)を提言した。
71,12月、ワシントンにIMFの主要参加国が集まり、ドルが過大評価であった
ことを認めて全面的に外国為替相場を修正することで合意した<スミソニアン合意>。
この結果、公定相場は1㌦=308円となった。
「日本敗北論」を展開した新聞もあった。
数ヵ月後、下村治さんに「学者は物事を知らない」と評された。
日本政府が円切り上げの先手を打つと損害を受ける業界への補償責任が重くなる。
米国が先手を打てば「米国にやられた」ということで政府の責任が軽くなると言われた。
私は「なるほど、官僚とはそういう考え方をするのか」と思った。
(小宮隆太郎08,12/22「私の履歴書」)