08,12/6(土)曇り晴れ
シアン 地下の水汲み上げてみるイトウハム思案に暮れる青の師走か
地下水からシアン化合物が。思案はシアンだ。
銀杏 翡翠ひすい眼の妻に銀杏いてふの野分けかな
いつもなら競争になるのに、けふはライバルは一人だけ。
そのライバルとも離れ、いつも毎年お世話になっている銀杏の樹のもとに行って、
でもそこでは一人だった。
夜の一献には新銀杏を焼いていただく。きれいな翡翠色だった。
林檎 朝まだき列車信州信濃へと手袋をして林檎の国へ
娘は友達のうちへ行くとて朝も早よから家を出た。
電車の中で食べる林檎が楽しみだとて、信州林檎を持って出かけた。
女児殺し 少年の眼うつろなり心まで幸満ゆきまろの名を祖父は静かに
71歳の祖父は犯人が特定できたことを墓前に報告すると静かに口にした。
21歳の少年は少女の遺体放置のすぐ前のマンションに。
趣味は漫画とカラオケ、仕事は8月から無職。
聞かれることに他人事のやうな返事を返す。
少年の眼も心も社会の中にぽっかりと開いた闇のやうだ。
幸満ちゃんがこの白髪の祖父の年齢まで生き永らえていたとしたら、
やはり孫にでも囲まれて、その名の通り幸せに満ちた人生になったんだらうに。
韃靼 韃靼だったんの海越へゆけば黒竜江ウスリーにカピタンを呼ぶデルス・ウザーラ
1975年、黒澤明監督作品。ソヴィエト側の強い要望もあったやうだ。
「カピタン」は「隊長」という意味か。
ウザーラはカピタンを呼び、隊長はウザーラの野生の自然に感嘆する。
1972年には日中国交正常化が。
08,12/7(日)いいお天気である。
つとめて コンビニや冬のつとめておでん煮ゆ
最近はおでんの種類も地方色豊かに、とのことだ。
山茶花 山茶花のここを書斎と定めたり(子規)
桐火桶 桐火桶無絃の琴の撫でごゝろ(蕪村)
緑さす 海上に人住まぬ島緑さす(沢渡梢)
石川直樹、若き写真家の好きな一句。カヌーで南洋の島巡りをしていた時。
ぬばたま ぬばたまの枕詞を使ひたくていろいろ闇をこしらへてみる(潮田清)
バッサリ 富士の山バッサリ斬りて冬構え
鋭利に斬ってみたいものである。
爆弾 クラスター人なる闇の浅からず悪魔の兵器何に使へり
クラスター爆弾禁止条約に日本は調印。
米、中、ロシア、イスラエル、北朝鮮などは調印せず。
さらに細かく分かれて地上で爆発するクラスター爆弾は、
地雷とともに戦争が終わった後でも、特に子供たちに災厄をもたらす悪魔の兵器だ。
最後の海軍大将井上成美
敗戦時56歳の井上成美しげよしは最後の海軍大将だった。
江田島の海軍兵学校の校長時代には歴代の海軍大将の写真を
撤去したエピソードが残っている。
海軍の大艦巨砲主義には最初から山本五十六らと反対、主流から長らくはずされる。
海兵からの特攻隊犠牲者4100人に話が及ぶと「ぎゅっと体が絞られる苦痛を覚えます」と、
終戦後は横須賀の山上のあばら家に貧に徹して隠棲した。
8月15日の敗戦記念日には終日断食をし、海の遠くを見る習い。
「兵隊は何も考えていない。兵隊は癖があってがーっと片寄る」
「兵隊を作るんじゃない、僕はジェントルマンをつくるんだ」と
その気概は清冽、苛烈な武人そのものであった。
昭和50年、12/9日、86歳の誕生日を迎えた成美はそれからまもなく12/15日に逝去する。
12/6日NHK