08,10/20(月)いい天気です。

愛      秋なのに麦藁帽をかざしけり子になりにゆく夫抱きに行く

 1982「愛のコリーダ」、猥褻が懐かしい。車椅子で緑翳りゆく路をゆく夫婦はまるで上質な欧風映画の一シーンのようだ。BGMに「戦メリ」。脳梗塞に大島渚が倒れてからの「4000日の今日」である。その存在が他の生物の邪魔にならないようにただただ生きてゆく。今は家族の物語である。


愛      吾が妻は吾を恋しかり吾が風呂をちちろと開けて覗き見るなり「夕飯よ」と言って覗き見る。

        夕餉は芋ケンチン、手羽先の白焼き、京菜のはりはりサラダ、漬物。おしまいに林檎。

本      寝間机本積む秋の何一つ何一つ進んでゐないのでありました。

芋      芋ふかす心からだも仕合わせに富良野の芋芋芋。夕食は芋けんちん。

木の子   じいさんの懐に孫きのこ寒む嬬恋村で木の子採りに山に入って行方不明のじ様とお孫さんかナ、今朝、発見された。飴玉なめて震えていたそうな。

醤      つきかてゝ醤ひしおで食べる今年米銚子で。唐箕、麦麹、寝かす、塩水、樽詰、1年とか・・・。ご主人は今年、60歳。そして、ご近所パワー。

キリン    秋風に思ひ屈することあれど天あめなるや若き麒麟の面つら(塚本邦雄)

キリン    群がる人頭の彼方見やりつつキリンはしづかにやせて佇ちゐし(河野裕子)

 キリンは明治40年に雌雄2頭、初来日。樋口一葉や正岡子規はキリンを見たことがなかった。おそらく啄木だって見ていない。キリンは冬の寒さに耐え切れず、2頭とも1年足らずで死んでしまった。小池光・歌人08,10/19日経