08,10/18(土)今日は真っ青な天気

糸電話    糸電話絣モンペの母がゐて林檎によれば母の於母影

 わたしの母は59歳で死んだ。そして母の姉が昨日入院したという報せを受けた。住んでいるところから大分離れたところの病院だが、いままでゐた療養施設から移動されたということだ。母の姉は92歳になった。その上認知症が始まった。もうそこの病院にはゐられないということで、その病棟にやってきたのだった。姉はその病舎で心の病の方や認知症になった老人の介護をおもにやってゐる。その病舎は私たちの父親が晩年入院し、そしてそこで脳溢血のまま亡くなった場所でもあった。偶然である。姉も65歳になった。林檎園のほとりに住んでゐる。わたしたちの母はよく林檎の花咲く季節から、そして林檎が育つころ、袋かけなどの仕事を手伝っていたものだった。母と姉はひとつ違いで仲がよく、母はよく姉の林檎園の袋かけを手伝ったものだった。

病舎      千曲川流れるほとり 山なみのあなたに見えて

        橋行かば白き病舎の 病得て死を待つ人の

        死に依りて生くる人々 年老ひて手を取り合へば

        昔語りす

         

        あなかしこ白き病衣に面影を探して頬の皺をまさぐる

 姉は名簿を見て、すぐに自分の母の姉であることを察知した。「ばあちゃん」「おお、まっ子か」。

奇跡の如く一瞬にしてお互いに分かったのである。「まっ子」は姉の小さいころの呼び名である。二人は手を取り合って病床で泣いた。そして、またとりとめもなく泣いた。しかし、しばらくしてば様はまた深い混瞑のなかに沈んでしまうのだった。心を病んだ何人もの人群れが壁ごとにゆれてゐる。無気力でそして命の瀬戸際の眼差しが幾重にも行き交う。わたしが電話をして、姉は林檎の木に埋もれた家の中で、今日は病舎が休みの日だというが、話を聞いているうちにしまいには言葉がつまり、そしてまた泣いた。母と姉はほんとにそっくりで、お互いに嫁いでからは口にこそ出さなかったが、仲がよかった。わたしも電話口のこちら側でついついもらひ泣きをしてしまう。


■介護療養型医療施設は「療養病床」というベッドを有する医療機関のことを言う。

 療養病床には介護保険適用

               医療保険適用の二種類があり、

 全国=約36万床のうち=11万床介護療養型である。

 ⇒厚生労働省は医療ニーズの高い利用者のために=22万床のみを医療保険適用として残し、

 介護療養型は2011年度末に廃止する方針を打ち出した。

 「介護民」が生まれるという声があるが、厚労省は療養型を基本的に老人保健施設(老健)などに

 移行する予定だ。政府としては少しでも医療費を抑えたい。

 ・特別養護老人ホーム

 ・老人保健施設(リハビリ目的)…「老健」も入所が長期になり「特養化」する施設が増えている。

 ・介護療養型医療施設(介護費用、要介護5で月=45万円近く)

 (上記が介護療養型病床医療療養型病床に分けられる。療養型医療型か。)

 ▼医療機関側にとっては一定の医療対応があるなか医師や看護師を減らし費用を圧縮しなければならない。

 「病院」の看板を下ろすか。

 ■医療養型を掲げたら、一定の医師や看護師を確保維持しなければならない。

 08,10/1日経