わたしがあふれてしまふ/わたしは自分の家なのに迷いみちになって溺れそうになって息が詰まって幾度も前のめりになるのをわたくしでない誰かが支えてくれた/親しい人ではないがどうも良く知ってゐるらしい/ヤバさうだから顔は見たくないんだ/いつもどうもそこいら辺にゐて/気分次第でどっと近づいて来る/あなたの人生はって精査し始めるんだ/襟首をつらまへられるってこのことなんかな/ここで、ここいらへんで諦めてもいいんかなと思はせたりする/大事なことはもう過ぎつつあってそれは取り返しがつかない/バカにされてもいいからもう人間でありたく/くたびれ切ったままでだらしなく/もうなんもでけんだよと/ほたらかし、だらしなく/首ごと車椅子にぐったりする/もう世間が云ふやうな元へ戻すことは出来ない/やあ、あんたでしたかと/ちょっぴり親し気に/でも気持ちを許したら一気に攫われるに決まってゐる/

わたしがあふれてしまふ/わたしは自分の家なのに迷いみちになって溺れそうになって息が詰まって幾度も前のめりになるのをわたくしでない誰かが支えてくれる/大きな昏い翅のそんな大きな黒い影に入ってたちまち一気に攫われてゆくのかもしれない/わたくしが目まぐるしく変わる/わたしはもうまるごと眠たいばかりだ

 

傾眠───

怖ろしい力でわたしに襲って来る。

もう抗いやうもない不思議な力だ。

永遠の力を得たかのやうに、

わたしは深々とそれに身を任す。

 

倉石智證

 

 

/秋深し隣りはなにを模擬弾頭

蒼穹の空太平洋を(9/25)

/AUKUSを牽制するとや我愛你(うぉーあいにー)

ICBMハワイ近くに

/栗ご飯魚はけふはカマスかな

モミ茸。

/栗ご飯妻にご機嫌うるはしく

/紅や秋海棠の花言葉

/兵隊へ征ったきりなの曼珠沙華

/石灰を撒いて畑に土作り菠薐草に秋の気長や

/総裁選どじょうの相手明日決まる

/試し掘りそろそろそろりさつま芋

/天高し芋掘りはいつかーさんや

/郷愁も漫ろなりゆく秋の空

/落花生の根の張る方へあのねのね

/遠山の稜線然り秋の空

/秋の虫追い立てて征く刈り払い

 

倉石智證

人生は夏休みより短い

とまれ今朝の曙光

デイの日はば様は庭に下りて

ああ、広々として気持ちがいいと

送迎の車が門に来る

行ってきますとリフトに載せられて車の中へ

車はずっと村道の奥の方へと走ってゆく

 

脳のきっと奥の方でちかちかと

きっと脳の奥の方でなにかが光ったかもしれない

老人は子どもの元へと繰り返し還す

絲曳車

昔を今に為すよしもがな

デイから帰って来たば様は物珍し気に庭周りを見て

ここがどこだか分からない

秋海棠が咲いたよ

庭の奥の奥の方で

夏は背(そびら)をみせて歩み去って行った

とまれ耀かな夏の日々よ

時は少しも歩みを止めることなく

かってば様もよくよく知っていた庭の奥の石の際に

秘密めかしてこんなささやかに

紅の秋海棠が咲いた

 

倉石智證