「ウーン…やっぱり値上がりしてるねー」

トンカツ屋さんのメニュー見ながら、選びかねる私とマジ子。

「本当は、このメンチカツも付いてるやつ食べたいけど、高いしなー」

私達は、100円アップする勇気が出ない。

「やっぱりいつものにするか」

長考の末、ヒレカツと、ロースカツセットにする。

はじめに出されたお茶は既に飲み干しており、かなりの時間が経ったと思われる。

たった100円にあと一歩及ばず。

相変わらずお金のない2人は、仕事が終わった後、アッサリ食事する流れになりながら、100円の壁にぶち当たり、悲しいかな、その壁は越えられなかった。

話始めたら、食事はそっちのけで、喋りまくる。

「おばさんには、もうそんなに出来ないっちゅーのにねー」

こういう時だけ「おばさん」を利用する。

「もうシステム変更とか、おばさんにはムリ」

「おばさんは物忘れする」

「おばさんは目も見えないし、耳もよく聞こえない」

おばさんになってみたけれど、おばさんって便利。

もう怖い物ないくせに、言い訳をフル活用して、危機を回避する。

風当たりが強く感じて来た最近だけど、似たような奴がそばにいると心強い。

「私達、声が大きいかも」

ふと我に帰り、周りとの声のトーンに違和感を感じて、そそくさと、その場を後にする。

「ケーキセット食べよう」

前回と同じ店に向かう。

「高い!」と文句垂れていたのに、その店の「推し」のセットを注文。

「ひーー!ケーキセットに2000円超え!」

そう言っておきながら、1番高いメニューを選択するとは、どういう事?

「メロン」を「季節のフルーツ」にしたら、300円安くなるよ?

さっきは100円に渋っていたのに…。

この件は「おばさん」とは全然関係ない。

私達はただ頭が悪いだけであった。