私の母ヒデコの、お料理の腕は、普通。
しかし、おにぎりとお味噌汁は、ピカイチである。
化学調味料を使わない人なので、素材の味を引き出すのが上手。毎度ちゃんと鰹節で出汁を取る、手間暇かけたお味噌汁は美味しい。
出汁の味は効いてる代わりに、味付けが薄いのが、我が家の特徴だった。
「薄味」ということに気が付いたのは、外食した時や、よそのお宅でのお食事をご馳走になった時。
肉じゃがも「甘口で薄い」から、夫との好みも違った。
冷凍食品などの出来合いのものが出てこなかったのも、すごいと思う。
私が実家にいた時、母にお弁当を作ってもらっていたが、おかずは全て手作り。母の実家がお米農家だから、美味しいお米も、叔父に送ってもらっていた。
「お弁当、美味しそう」
とその頃よく言われたものだ。
お弁当のおかずが得意だったのかな。
普段は和食中心で、洋食はまずない。
好物のカレー、ラーメンは食べさせてもらったけど、オムライスが食べたくなったら、自分で作るしかなかったし、ハンバーグも、恐らく食卓に並んだことはなかったように思う。
受験の時はカツ丼作ってくれたり、お弁当にまつわる記憶は、なかなか良い。
「お母さん、今日のささみ揚げ美味しかった」
「昨日の、卵焼き、いつもと違うね」
などと反応したり、褒めたりすると、完全に有頂天になっている。
有頂天になると次の日のおかずが更に豪華になる。
「今日はねー!お弁当、すごいんだー!」
いつもより大きめのお弁当箱が二つ。
おかずも多ければ、ご飯も多い。
「しめしめ、うまくいったわい」
そしてお弁当箱の蓋を取った。
「あああっ!」
白いお米がぎっしり詰まったランチボックスが2つ…。
「やられた」
どうやらおかず二つは姉の所に行ったに違いない。
「あー、またやっちゃったの?」
友人はこの光景を何度か見ている。
しょうがないからみんなにおかずを一切れずつ分けてもらう。
あわてんぼうの母だなー!でもいつも間違う時、何故私ばっかりご飯が2つなんだろう…?
「あれ?」
ぼんやりしてるから絶対母のせいと思い込んでいたが…、今思えば、あれは姉が仕組んだことだったのかもしれない!
30年以上前のことに、たった今気付いたのだった。