10月7日木曜日。44日目。

おかしな迷惑夫婦を演じる事を強要しておきながら、夫は文句も言わず、おとなしくしている。

しかし、気がおさまったからではない。

自分から言うのが嫌なのだ。

お願い事は断られるのが嫌なので、日常的に、人に物を尋ねたり、お願いするのは私の役目である。

そういう所が、コロナ後遺症時にもしっかりと現れて、迷惑患者、追い出され作戦は、実行にも至らず、失敗するのである。

面会は一切禁止。

ほとんどの人が、「まだそうですよね」と理解できるであろう事が、夫にはわからない。

八階の窓の上から、私を見て悲しそうに手を振っている。

「もう少しそこにいて」

悲しそうに言ってくるけど、寒いんだよ‼️

風が強い。10月の風はもう冷たくなっていた。薄いコートしか羽織っていない私が、ブルブル震えながら8階の窓を見上げてしばらく見ていたけど、寒さに耐えきれずサッサと帰る。

その後ろ姿を見ながら、夫は本気で脱出を考えた。



部屋のカーテンを違って窓から抜け出そう…

本気で考え、でもそれは実行に移せない事は3秒でわかりそうだけど、この時の夫には三日必要だった。