私はいつもデカい面している。
デカい事言う私の顔も、本当にデカい。
首から上だけ見ると、平均的な大きさだけど、全体で見たら、頭でっかち。
時に「サザエさん」呼ばれていたこともある。
太っていた20歳くらいの時は、「ドラミ」と呼ばれていたし、若さでそれもご愛嬌という時期が過ぎたら、「ジャイ子」に変わっていた。
いつも「ゲハゲハ」下品に笑うし、ノリで何でも片付ける、大雑把さ。
これは、性格や血液型の性質などを乗り越え「昭和」のイケイケが、しっかり擦り込まれたせいだと思う。
何でも笑っていれば、人気者。ドラミもジャイ子も、かわいこぶりっ子していれば、盛り上がる。
私の友人は、笑ったら八重歯が見える「キバ子」、いつも「マジ?マジ?」と言っているので「マジ子」、など、うっかり見せた仕草や見た目で、決定的なあだ名が付けられた者が大勢いる。
そんな輩が集まったカラオケは、イマドキの盛り上がり方とは違っていて、少し音程を外し気味の「カワイイ」歌い方をして喜んでいた。
ある日、昭和な私と友人は、オジサンで一杯のスナックで、カラオケを楽しむこ事となる。時は令和になったかならないか…そんな時だった。
私は頑張って「西野カナ」を歌った後だったと思う。その後に流れたイントロで、皆一瞬静かになった。誰もが知っている「美空ひばり」。
悲しき口笛を歌い出したその声に、皆、振り返った。
振り返りたくなるような見事な歌声であり、ひばりさんに似ているし、歌唱力もある。今はリアルに歌手本人に似せて歌う番組がいっぱいあり、もう、「ちょっと上手い」では、ダメなのだ。
「しまった!」
私と友人は顔を見合わせた。完全にその場を持っていかれた。歌っている彼女は、私達よりずっとずっと若い子なのに、オジサン達の本当に喜ぶ術を知っている…。もてはやされる側に慣れてしまっていたから、相手を「立てる」なんてことはしない。
「これこそが本当の昭和の秘技‥」
自分達よりも、ひと回り以上若い彼女から、私達は、本当の昭和というものを痛烈に思い知らされたのであった。