ドーベル…ごめん。

ママは行けないよ…。

今日はドーベルの命日なのに、側に行ってあげられなくてごめんね。

お星さまになってもう一年経ったね。

でも一日も忘れなかったよ。


9月9日木曜日。16日目。

人工呼吸器挿管した夫とはもう携帯でやり取りができない。

濃厚接触者の私は、待機期間14日まで。

自宅にいながらも、出来ることはやって来た。

ここまで来たら、後はもうどっしりと構えていよう、そう思っていたら電話がかかってきた。H大病院からだった。

「ご主人、病院変わります。これから搬送しますので、搬送先からまたご連絡いきます」

???

はてな?

ここに入れば安心だと思って構えていたのに転院ですと?

あれよあれよと急展開し、夫はI大病院に移された。

大学病院の方々というのは、全体的に若いのか、高度救急救命センターというところが若いチームで成り立っているのか。電話の先の声は、とにかく「若い」。

ウイルス発生から今までずっと、第一線で活躍してきて、疲労は相当なものなのに、悲惨な印象は受けず、とても活気があり、なんだか安心感があった。

担当医師からの説明、担当看護師からの説明、看護師長、薬剤師からの説明。

記憶が間違っているかもしれないけど、いろんな方とお話した。

「あれ?今までと違うな」

システムが整っている。木曜日と月曜日の午後に、経過の報告をしてくれるという。

肺に送っている酸素はMAX100%で、このまま100を必要とする状態が続くとエクモ(体外式膜型人工肺)が使われる。

「エクモ使用になる可能性が高いです。経過を見て対応します」

とうとう最後の砦「エクモ」まで来てしまった。ここ数日がどうやらヤマのようだ。一嗹の流れに気持ちが追いつかないかと思ったら、そうではなかった。私は落ち着いていて、現実をよく理解していた。

不自然な転院。

きっと…ドーベルが、そうさせたのに違いない。


愛猫のドーベルは、この前の年の2020年9月9日に18歳で亡くなった。

「ドーベル」という名にすぐビンとくる方もいると思うが、JRAG1レース5冠の名牝、「メジロドーベル」からいただいた名前である。

ドーベルが亡くなる2日前に、動物用ポカリを買いに行ったホームセンターの帰り道、雨上がりの午後の空に、美しく架かる「虹の橋」を見た。

どうか、まだあの橋を渡って行かないで…

その日に息を引き取ってもおかしくない瀕死の中、ドーベルは頑張った。

9月9日…その日が翌年の運命の日になるから。