9月1日水曜日 8日目。

午前11時の約束で、私もPCR検査を受ける。

夫の時もそうだったが、PCR検査の場所は、絶対に人に言わないように釘を刺されていた。

もちろんそうだ。理解できる。SNSで、面白半分に実況中継されては困るし、近隣から、苦情が来たら出来なくなるし。

決まった事は、守るべきだ。

私は割とそういうタイプなので、深く突っ込まない。

夫は逆で、「何故」なのか納得しないと了承しない。変なところで「どちて坊や」が出るので面倒くさい。

決めた側が、間違っているとしても、その場の状況次第では、スピードが大事な時もある。

さて、私の場所は、某大手ホテルの駐車場。知っている所なのでスイスイ行ける。駐車場に入ると白い宇宙人…ではなく白い防護服姿の沢山の方々。

「オーライ、オーライ!」

そんなジェスチャーで、車を誘導してくださる。場所は違えど、昨日と同じ手順のはず。任せて下さい!私はモタモタしないで出来ます!

口いっぱいに、唾液を頰張っておいて、唾液採取容器を受け取り、ダバーっと、勢いよく唾液を出した。

容器をすぐ別の地点で引き渡し、ぶっちぎりの一位通過でその場を後にする。

「頑張って!」

口パクだけだが、感謝を伝える。この見えないウイルスと戦うために、みんなが頑張っている。慌てず冷静に物事に対処しよう。私は腹を括り、家に向かう。

途中、連絡しておいた友人に、大量の、エタノール、ドリンク剤、水を買って置いてもらい、接触しないように受け取った。

私も感染しただろう。ウイルスの吸い込みを避けるなんてできるわけがない。

もういい。なったときに考えよう。

不思議と自分の事は、怖くなかった。

しかし家にいる夫の熱と呼吸苦は更に酷い。

「もうマスクしなくていいよ」

と、口のあたりをペコペコさせているフニャフニャのマスクを剥ぎ取った。

感染したんだから、もういいや。

私はもしかしたら無症状かもしれないし。あはは。

夫の様子がおかしくて、一晩超すのは厳しいかも。私は夜中にまた救急車を呼んだ。

酸素は更に低くなったため、夫はそのまま運ばれた。