10月。

走り始めて、6ヶ月になる。

定番のスースーハクハクという呼吸を、相変わらず続けている。

気持ちよく走れるならもう何でも良い。どうせガチャピンなんだし、呼吸も怪獣級で良いのだ。あはは。

ついに半年。駆け足のように過ぎた半年は本当にマラソンのよう。

普通に生活するよりも遥かに充実した期間であった。

仕事から帰宅してすぐ、走るという作戦は、どうやら当たりだった。

家に着いて、間違って座ってしまったらもうおしまい。

テレビを付けたり、何か口にしたり、携帯など見ちゃうともうダメ。ただそれだけで、15分が一瞬で過ぎる。

少しでも寛いでしまうと、走りたくない気持ちが10倍になる。

作戦としては、9時からの連ドラを見たければ、早く行ってこい、さもなくばドラマの続きは見れないぞ、録画も禁止!という縛りを設けるというアイデア。

録画なしということで、大慌てで家を飛び出す。

自分で仕掛けた事にまんまと引っかかる。

一人で走り続けるモチベーションを保つには、目の前の人参を色々変えないと、すぐにでも、辞めてしまいそうだった。

走りながら「無」になるかと思ったら、大間違い。アレコレ色々考えたり、目にするものにギョッとしたり、頭が忙しい。

前を歩く若い女性がいたら、背後から息遣いの荒い者が近付くと不安だろうと、「コホコホ」と咳払いまでしてみせる。

「安心して下さい、女性ですよ」と演出してるつもりだけど、安心してくれているかどうかは分からない。

ランニングには、このような「女優力」も必要で、自分のペースだけを考えることは出来ない。

「あ!自転車!危ない!」

勿論自転車も通る。夜道なので、気をつけてても、気付いたら目の前にいる。

私は、急に視界に入ってきた光を素早く避けた。通り過ぎるのを待っていたけど自転車は通り過ぎない。

「あれ?」

辺りは真っ暗。光は消えていて、自転車もない。

と思ったら、目の前にまた自転車のヘッドライト!…てはなく車道を走る車のライトが、橋の欄干に反射して、丸く光っていただけだった。

「ぷぷぷ」

おかしくて笑ってしまった。もともと酷い「ぼんやり病」なのだから、正しく状況判断しないと、おかしな事をしてしまいそう。

妄想しながら走り、笑いながら川に落ちるかもしれないし、帰宅途中の人の後に続き、その人の家に入ってしまう危険性もある。

不法侵入で、逮捕されるから気をつけろ!

今日も夜空の月が、私に警告する。


さて、そろそろ半袖では走れない気温になってきた。

スポーツ店も、防寒着が揃っている。上下のウインドブレーカー…軽いし暖かい。走り始めの4月頃は、持っているニットの上着で走っていたので、身体が重く、余計に辛かった。

目立つカラーは必須条件。私は迷わず赤を選ぶ。

勿論わざとなのだけど…それは必然とも言える。

今度はガチャピンから、ムックになっていた。