おばさん が来る...

ひたひたとこちらへ向かって...

おばさんが...来るー!

(「悪魔が来たりて笛を吹く」じゃあるまいし、そういう言い方はいけないと思うぞ)

だ、だってー!


カバ君、コンサートは何にも邪魔されずに聴きたい...

特にアルミンクさんのようなのは、全くの静寂の中で...心ゆくまで...聴きたいのだー!!

(どうせ不調だったんだろうが)

それはあくまで結果論でー!

というかよく聴けなかったから余計にー!!


スタッフは何してたんだスタッフは?!

こんなタイミングで中に入れるとは。

それともやはり第1楽章が終わるまでは入場できないというのを理解させることができずにやむなく...?

つまりそれは...

カバ君もまた今更移動はできないということなのだー!

全楽章を通してー!じたばたじたばたじたばた...

こんなことなら遠慮せずSに移動すれば良かったー!!


い、いや落ち着け。

幾らなんでも演奏が始まる前におばさんが着席するのは無理だ。

となれば少なくとも第1楽章の間はスタッフが隅っこで立ち待ちさせる筈...

...って、スタッフは何処だスタッフは?

(↑ワラをも掴む思いで辺りを見回すカバ太郎)

だ、誰もいない...?!

あああ...これがサントリーなら...演奏中も要所要所にスタッフが待機してるというのにー!

こらー!トリフォニー!!何とかしろー!!!


あああ...

...あり?

おばさんがうちらの列を通り越してもっと後ろに行っちゃったよ?

もしかして...

おばさんの方が別に空いてる席を探したとか...?

その隣の人には悪いが...ほーッ...

と安堵したのも束の間...

単に列を間違えてただけだった...

やはり障害故か...


そういう人はいたわらなくては...

そうとも、いたわらなくてはいけない。

いたわらねば...

いた...板を割りたい心境じゃー!バキベキバキィ!!!

(どういう心境だ...)

はーはーはー...


それでももう片側が空いていたのが不幸中の幸い。

おばさんが着席するのと同時にさっと横へ。

おばさんがまた一緒に移動して来ないようバッグを元の席に置いて。

(やっぱり2席占領してるじゃないか)

非常事態なんですぅー!

物凄く低く小さい唸り方だったから1席でも開けておけば...


そうして気が付いた時には演奏はとっくに始まっていた...

あああ...最初から聴きたかった...!!!

おまけに気持ちをかき乱されにかき乱されたものだからなかなか集中できず...

(ステージにもかきあげ が約1名...)

うーん、アルミンクさん、この日もかき上げやってたのかな?

そこまで見てる余裕がなく...

あれはあれで見ると多少イラつかないではないが...

妙な雑音で邪魔されるよりは1万倍マシだ。

何と言っても演奏会なのだー!

(落ち着け)

はっ...そうだな...

1席空けてあることだし。はーはーはー...

(↑既に精神を消耗し切っている)


で、第1楽章途中から。

うーん...

音は美しいし、演奏はドラマティックだし、これで何の不満があるというのだ、私は?

いや別に不満はないが。

何故だろう?

やはり乗り切れない...


第2楽章のホルンがまた前日同様に美しく...

金管って勢いよく吹き込まないと音が出ないと聞いたことがあるが...

それは要するに、大きな音でないと出しにくいということで...

それでよくこれほどまでに抑えた音を...

しかもこれほどまでに障らない、美しい音を奏でるというのは...

至難の技に違いない...!

このホルン奏者に限らずそれがオケ全体を通してアルミンクさんの音なのだけれど。

これほどの音を金管全体にも要求するというのは...

ステージでは貴公子然としているアルミンクさんだが、練習では鬼なのか...?

(かきあげです)

...邪魔するのはおばさんだけにしてくれー!


「わさわさわさ...」

...え...?

......

(カツオ君か?それともアレクサンドル君か?)

アレクサンドル君をカツオと一緒にするな。

自分がした くせに)

...

おばさんがこちら側の腕全体をわさわさとかいている、いやさすってるのか?

どうやら唸るのは止めたらしいが...

一体...どうさすったら...そこまで盛大な音が出るのだー?!

静かな部分なのにー!!

いや静かな部分だからこそそこまで聴こえるのかもしれないが...

...止んだ...ホッ...

よし、もう1度集中...


うーん...

どうも乗れないなぁ...

いいと思うんだけど。

美しく、振れ幅大きく、ドラマティックで...

その上何を要求するというのか...?

響きの偏りもないし...


特に弱音での音の美しさは特筆もの...

「わさわさわさ...」

......

わーん、おばさんがまたカツオになった...


アルミンクさんのお陰で海産物モードとは縁が切れた と思ったのにー!

(本人がカキアゲですが...?)

あ、そうか...

カキアゲには桜エビとかも入ってるし。

私はエビ天とかカボ天とかの方が好きだが。

(カボ天?)

カボチャの天ぷらです。

外がさっくり、中がほっこりで美味しいんですよ。

(演奏に集中する気あるのか?)

はっ...また気を削がれ...


よし!今度こそ...!

「わさわさわさ...」

...わーん...おばさん静かな部分になると退屈なのか、カツオになるー!

こっちは全部聴きたいのにー!!


...もしかして...寒いのかな?

冷房が効いてる中で隣に人がいるのといないのとでは体感温度がかなり違う。

私はよく駅から走りに走ってホールに飛び込むが、両側に人がいる席だと座ってから汗が噴き出して 長いことダラダラになる。

他方、走って来ても両側に人がいないとそうはならず結構すぐに汗が引き易い。

私が1席空けて移動したからそちらだけ寒いとか...?

こっちは寒さなんぞ感じる余裕もなかったが。

...止んだ...ホッ


よし今度こそ!今度こそー!!

......

「わさわさわさ...」

わーん...


こ、これが...

これが映画の上映中なら、私もここまで煩わされはしない。

映像は幾らでも再生がきく。

1回目でも2回目でも変わりはない。

今日逃してもまた見にくればいい。


だが音楽は...生での演奏は...

いや音楽でもお客が一緒になって歌ったり腕付き上げたりするロックやポップスでならその中にカツオ踊りをしてるのがいた所で気にもならないだろうが...

クラシックは...

静寂の中で音の隅々まで聴き入りたいクラシックの場合はぁー!!!

例え録音したとしてもその場で生で聴くのと録音ではまるで異なるのだ。

音が奏でられたその瞬間瞬間に消えて行くのだ。


だからと言って、知的障害のある人はコンサートに来るなとは口が裂けても言えんしなぁ...

でもだからと言って...

ここまで聴くのを邪魔されて...台無しにされて...それに耐えなければならないのか...?

うっく、ひっく、ひっく...

どうすることもできないだけに終わった後の無念、悲しさ、悔しさは筆舌に尽くしがたく...


それでも...それでもだ。

目一杯盛り上がり迫力の第4楽章ではあまり静かな部分もなく、従っておばさんもカツオ踊りをすることもなく...

何とか...聴くことができた...はーはーはー...

(↑聴けたはいいがあまりに消耗し切っていて今一集中できていない)

いんや、それでも1番聴けたよ、この曲の中では。

そして...


ここから真面目な(?)音楽論なのでちょっと休憩ね。

(カバ太郎が...真面目...?)

意気消沈して冗談も出ないわい。

(随分出てたように感じるが...)