少し前のことになりますが、衆議院議員会館で行われました院内集会で印象的だったことについてご報告いたします。
十分長いのですが、長くなるので1個ずつ。

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時:2019年2月22日14時~
題:「殺処分ゼロの法改正を求める」
~第4次動物愛護管理法改正・第3次法改正附帯決議を法律に~

高井崇志さんからの動愛法骨子案についての発表の記事→
今月、まさに条文化されているところかと思われます。

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呼びかけ人である全国動物ネットワーク(ANN)代表・鶴田真子美さんよりご挨拶がありました。
鶴田さんは、茨城県のCAPINの代表でもあります。
広く拡散された、茨城県動物指導センターへの抗議のもようが撮影された動画(※今は削除されています)のご本人です。

この動画を視た人々によるコメント欄では、
「茨城県ひどい…」「やる気のない職員…」
などから始まり、果ては職員さんの人格否定のようなコメントまで書き込まれていました。

実際には、茨城県は殺処分数毎年ワースト3以内だったところから這い上がってきています。

最初はボランティア側からのはたらきかけがあったからです。
そこから「助けることができるんだ」という機運が高まり、職員さん自ら負傷動物や乳飲み子に適切なケアをしてくださるように変化して行ったそうです。

我が家でお預かりし、里親さんのお家の子となったさみちゃんも茨城県動物指導センターに負傷動物として収容されていた子です。
おそらく交通事故に遭いごはんも食べられなかったさみちゃん。
通常であればここで殺処分が決まってしまってもおかしくはなかったのです。
(ひどいセンターでは、放置して自然死扱いするところもありました。)
ですが、獣医師でもある職員さんが鼻カテーテルをつけ、栄養を入れてくださったおかげで保護猫カフェねこかつで引き出すことができ、そこで自分でごはんを食べられるまでに回復し、私の家でお預かりして、里親さんのお家へと繋ぐことができました。
センターの職員さんががんばってくださらなかったら、今のさみちゃんは存在しなかったのです。

こんな変革を遂げたセンターへの批判動画を扇情的に流して、なにも知らない一般の方々から本当に心無いコメントがたくさんぶつけられていたこと、日々たくさん収容されて来るどうぶつをなんとか殺さないよう、殺処分を減らせるよう、どうぶつの痛みを除けるよう、がんばってくださっているセンターがまるで悪者扱いされていること…については、本当に腹立たしく思いました。
10年も続けられているCAPINさんの活動や活躍を知った上でなお、動画でのこのやり方は支持できないと思いました。

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前置きが長くなりましたが、院内集会での鶴田さんからのご挨拶の内容です。
「この度はお騒がせしております」から始まりました。

・茨城県の動物福祉・愛護がどれほど遅れているのかのお話。
以下は、水戸の小学生の産業動物見学での一幕だそうです。 
仔牛の目が白くなっていることを疑問に思った小学生が農場主に尋ねたところ、
「仔牛のうちに目をつぶしているからだ」と説明し、「この方が扱いやすいし、肉もおいしくなる」 と伝えたそうです。

そこには命の尊厳などなく、産業動物として、もしくは食べ物としてしか存在できない牛と、それが当たり前のこととして子どもたちに伝えられる大人の悲しい構図だなと感じました。
そしてこのような考え方がバックグラウンドにある地での動物愛護の難しさも感じました。

・2018年12月27日から、毎週4頭の犬を引き出して殺処分を止めている現状のお話。
殺処分定義から除外される「譲渡不適正な動物」の扱いについては、
CAPINは野犬の多い地域である常総市の殺処分ゼロを4年続けている。
→「野犬の保護は難しいけれどもゼロは可能である」ことを主張されていました。

そして、下記のことを力強く訴えていらっしゃいました。
『殺処分ゼロは、残業ゼロとか待機児童ゼロなどと違って、ひとつひとつが命だから大切に掲げたい。
時間をかけてゼロにしていく、時間をかけて施設を作っていく…のではなく、今日殺される命を救いたいのです。
法に記載されている「みだりに殺さない」というのは、可能な限り殺処分を回避することでもある。
それは国民も自治体も同じです。(要約)』
 
鶴田さんの思いの強さの現われ、そして行動の原点だと思いました。

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『殺処分ゼロ』という言葉が一人歩きを始め、その弊害について議論がなされるようになりました。
ボランティアに丸投げ、保護譲渡だけで解決しようとする自治体もあります。
それは叩かれて当然だと私は思います。
なぜならばその先にあるのが真の解決ではないからです。
こんなやり方が横行しては愛護が国ごとおかしな方向へ行ってしまいます。
ボランティアが破綻したら、ただちにどうぶつたちが危機に晒されます。
また、崩壊していなくとも、過密収容によって犬同士のリンチ死が発生している大変有名で大きな施設もあります。
これは確かに「殺処分ゼロ」の弊害だと思います。

ですが、弊害があるから「殺処分ゼロ」に反対するのもまた本末転倒です。
正しい殺処分ゼロを目指せばいい、それだけです。
殺処分される子の気持ちになってください。
なぜ、心ある側の人間までもが『殺処分ゼロ』をそんなに嫌うのでしょうか。

確かに、引き出しを続けているボランティア方は疲弊していると思います。
中にいるどうぶつやスタッフを守るために崩壊しないようキャパを守りながら、時に「もう受け入れられない」と言うことも必要かと思います。
見送らなければならないこともきっとたくさんあるのだと思います。
助けても助けてもなお救えない命…で溢れている現状は筆舌に尽くしがたいほどの心痛だと思います。
それでも殺処分ゼロを目指すことは、殺されるどうぶつたちにとって必要なこと。
人権のある人間に置き換えれば当然のことなのに、それが犬猫だから仕方ない…とされるのはとても切ないことです…。

ただ、収容されている犬猫のQOLを考えた時にやむなくとる措置であることも理解しています。
殺処分ゼロが現状難しいものであることもわかります。
ただ、メンタリティとして、目指すべきは殺処分なんてない社会です。
殺される子がいない社会です。

保護譲渡は現状不可欠な活動です。
これをしなければみんな死ぬからです。人間の手によって殺されるからです。
また、殺さなければならない職員さんがいるからです。

そして、それをやるのは、蛇口を締める活動ありきです。
蛇口を締めないであふれ出るところを次々すくい続けたってきりがないのです。
そんなこと大半の、きちんと考えている愛護の人間はわかっています。
わかっていなくて延々と続くことをやっているわけではないのです。

この延長線上に譲渡会があります。
協力してくださる企業も増えています。
譲渡会は啓蒙啓発の場でもありますし、譲渡の場でもあります。

まず知っていただくために、誰でもが近寄れる場にするために。
企業が協力くださることがどれだけの力を発揮しているか。

愛護団体なんて正直敷居が高いのです。
条件も厳しいと聞くし、なら街中にあるペットショップへ行く方が気軽だし楽なのです。

そんな中で、特に企業が協力してくださる譲渡会は突破口なのです。
IKEAに来てみたら!島忠に来てみたら!まるひろに来てみたら!蔵里に来てみたら!住協に来てみたら!京王百貨店に来てみたら!
かわいい保護猫や保護犬がいた!なにこれ??
それがきっかけになってどうぶつを取り巻く問題を知ってくださる方々が増えれば、世間の声だって大きくなります。

議員立法の動愛法の改正には世間の声が重要なのです。

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最後に言わせてください。
殺処分しているのは動物指導センターや動物愛護センターと呼ばれるところですが、その執行を止められないのはそれら行政施設だけの問題ではありません。
市民サービスとして不要犬引取り箱を設置したり、不要犬引取り車を出している、
啓蒙啓発どころか蛇口を締めようともしないような行政には市民から抗議の声を上げるべきことだと思いますが、
がんばっている行政に対して抗議しても、よい結果を生むとは思えません。
がんばってもどうにもならないのだから、協力を申し出る方が得策かと思います。
茨城県に限った話ではなく、そんな風に私は思っております。

また、殺処分数の定義について。
環境省が「譲渡対象になるけれども殺処分された動物」のみを殺処分数にカウントすると昨年打ち出しました。東京都が先行してそのカウント方法を取り入れており、環境省もそれに乗っかった形です。
おかげさまで東京都は殺処分ゼロです。
殺されたであろう、シャーシャーの猫たちや、牙をむく犬、助からなかろう傷を負った犬猫たちが確かに存在していたのに。もう数にさえ上げられないのです。
(誰が線引きするのでしょう。うちの子たちもほとんどの子がはじめはシャーシャーでした。時間をかければ馴れます。甘えだします。そんな子たちが、”殺された=生きていた”という事実すら表面上は消されてしまいました。)
確かにこれは殺処分ゼロの弊害です。

もうひとつ。
行政殺処分だけでなく、生体販売業の裏で行われている闇の殺処分があることも忘れてはいけません。
殺処分=行政殺処分を指すというのがこれまでの定説でしたが、今は違います。
センターが引取り拒否できるようになったが故に生体販売業界からの引取り数が激減しています。ですが、これまでセンターで殺処分してもらっていた分を「じゃあ手元に残して生涯めんどうみよう」とはならないのです。自らの手でどうにかしなくてはならなくなりました。引き取り屋と呼ばれる職業が横行したりもしています。

表面的には解決が進んでいるように見えて、実のところ見えない化されただけ…という部分もたくさんあります。

もしかしたら行政職員にすら表面的な数値にだまされて「悪徳業者は日本から排除された!」と言ってしまえる人が現れるかもしれません。それはその人が不勉強なだけなので真に受けてはならないと思います。

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正しい殺処分ゼロを目指す社会でありたい。
声を上げ続けたいと思います。