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スポーツ男ののほほん魂

いろんなサッカーのことについて、書いて行きます!

 まさに値千金だった。
 11月のバイエルン戦の前半10分。左サイドのマニャンが上げたクロスを、中央に走り込んだマリオ・ゴメスがヘディングしようとしたが空振り。しかし、運良くボールが股間に当たり、それがネットに突き刺さったのだ。
 シュトゥットガルトは3-1で勝利し、バイエルンに今季初の黒星をつけた。ゴメスの股間が“スーパー・バイエルン”の不敗神話を葬り去ったのである。
 試合後、ゴメスは照れながら言った。
「人生で最も痛いゴールだった。得点の部位は、腹と腿の間ってことにしておいて」
 マラドーナの神の手ならぬ、神の……。股間に当ててのゴールは、ブンデスリーガ史上初めてのことだ。
「体のあらゆるところを使ってゴールを決める。ゴメスは真のストライカーであることを証明した」
 シュトゥットガルトのフェー監督は冗談交じりにユース育ちのエースを絶賛した。
 ゴメスは今、ドイツ代表の中で最も勢いのあるストライカーだ。
 昨季は14得点を挙げてシュトゥットガルトのブンデスリーガ優勝に貢献し、リーグMVPに選ばれた。今年2月のスイス戦でA代表にデビューすると早速ゴールを決めた。189cmという高さを生かしてヘディングが強いだけでなく、足元のテクニックがあり、スピードもある。
 レーブ監督は、こう評価する。
「私は手持ちのカードに、ゴメスというハンマーのような武器があることは嬉しい」
 クローゼも、ポドルスキも、クラニーもいるが、彼らは既にW杯やユーロを経験済み。ユーロ2008において、ゴメスはドイツの攻撃陣に新たな風を吹き込んでくれるだろう。
 1985年、ゴメスはスペイン人の父とドイツ人の母のもと、シュトゥットガルトから130km離れたリードリンゲンという小さな街で生まれた。バート・ザウルガウやウルムといった地元のクラブですぐにずば抜けた存在になり、名門シュトゥットガルトからオファーを受けた。だが、ゴメスは「地元でも一流になれる」と豪語して全く興味を示さなかった。田舎チームで天狗になっていたのである。
 しかし、ウルム対シュトゥットガルトのジュニアユースの試合が、彼の人生を変えることになる。シュトゥットガルトの洗練されたサッカーの前では何もできず、0-7で完敗してしまったのだ。
「このままレベルの低いチームにいてはダメだ。すぐにでもシュトゥットガルトに移籍しなければいけないことに気が付いた」
 と後にゴメスは振り返っている。
 16歳の時、ゴメスは実家を離れ、シュトゥットガルトの寄宿舎に入った。
 既にシュトゥットガルトのユースはGKヒルデブラントやFWクラニーを輩出しており、「育成の名門」として知られていた。下部組織のスタッフは50人を超え、中でもユース部門の責任者フリーダー・シュロフとスポーツ部門の責任者トーマス・アルベックの2人が、時に厳しく、時に優しく父親のように選手をサポートしてくれる。
 彼らが重視するのは、規律だ。ピアス・タトゥー・長髪を禁止。携帯電話もクラブハウスでは電源を切る。イケイケの年頃のドイツ人は、客観的に自分を見ることができないが、「礼儀正しさを身につけることで、それを改善できる」とシュロフは考えている。
 ゴメスは言う。
「シュトゥットガルト・ユースの選手にとって、シュロフとアルベックは大切な相談相手だった。彼らはいつも傍にいて助けてくれた」
 また、シュトゥットガルトの地元を拠点とする世界的大企業、ダイムラー社の存在も大きかった。ダイムラー社がユース年代の大会を毎年主催し、ヨーロッパ中の名門クラブと対戦することができた。
「この大会が、自分にとって成熟する過程で大きな役割を果たした。トップレベルの選手に接することで、いろいろと学ぶことができたんだ」
 ゴメスは17歳の時に3歳年上の姉と一緒にアパートを借りて、寄宿舎を離れた。だが、パーティーやディスコといった夜の世界に引きずり込まれることはなく、今でもアルコールはほとんど飲まないし、タバコも一切吸わない。シュトゥットガルトの先輩であるクラニーはパーティー好きとして知られるが、ゴメスはそういう夜遊びよりも家でゆっくりすることを好む。コメントが真面目すぎてつまらないという意見もあるが、「真面目さ」は間違いなく彼の武器の一つだ。
「自分が思うに、ユースの時は他の道を諦めてでも、サッカーに打ち込まなければいけない。もう一つ大切なのは、厳しい状況の中で信じること、そして諦めないことだ」
 18歳の時、’04年3月のチャンピオンズリーグのチェルシー戦でデビューを果たすと、ここから一気にステップアップしていく。’04-’05シーズンはブンデスリーガで8試合に出場、’05-’06シーズンは30試合で6得点を挙げた。昨季の活躍ぶりは、既に冒頭で書いた通りである。’06年W杯後、ドイツ代表にはヒルバート、タスキ、カストロといった若手選手がたくさん入ってきたが、ゴメスはそのニュージェネレーションを代表する存在になっている。
 ただ、ゴメスは自分のルーツも忘れてはいない。今季CLのグループリーグでバルセロナと対戦した時に彼は言った。
「幼い頃から一番憧れていたのはバルセロナだ。いつかバルセロナでプレーすることを夢見ている」
 まだ国際的には有望な若手の一人に過ぎないが、夢を実現するためにEURO2008で新たな一歩を踏み出したいところだ。