5、6歳の頃初めて食べた時から大好きだったお菓子があります。
大分の「瑠異沙(るいさ)」という、バイオレットリキュールで香り付けした餡をミルクバター風味の生地で包んだお菓子です。
詳細不明ながら、佐伯市に実在したキリシタン女性をイメージして作られたお菓子だそうです。
昔は箱の表面にベルベット風の生地が所々貼り付けられて上品さが醸し出されていました。
自分でネット検索出来るようになった頃には瑠異沙について調べて
「瑠異沙の元になった女性のお墓に行ってみたい」
と思う程大好きで、
「この執着は何か変だ」
と自分で思う事もありました。
過去世を思い出すようになって
「私達の過去世に細川忠興・ガラシャ夫妻がいる可能性が高いのであれば、昔から妙に執着している『るいさ』もガラシャの近くにいる!」
そう思った瞬間、るいさを見送った時の映像が脳裏に流れ込んできました。
「るいさ」はガラシャの過去世に関して、私が自分から探し求めた唯一の人物です。
るいさは優しい雰囲気ながらも聡明で芯のしっかりした女性でした。
髪は栗毛色で、少しハーフを思わせる二重瞼の顔の整った、「絶世の美女」という言葉の似合う美しい女性でした。
深夜の淀川らしき大きな河の渡船場で、るいさは生後1ヶ月程の男の子を抱いて小舟に乗っていて、私と侍女3人、警護の武士(金津助次郎)の合計5人で彼女の見送りに来ていました。
るいさが抱いていた赤ちゃんは、肌が白く目もぱっちりした美しい顔立ちで、本当に「玉(宝)のような」可愛らしい中にも凛々しさのある子でした。
沖には2隻の船が泊まっており、るいさと子供が一生困らないよう身の回りの品と沢山の銀を箱に積んで、るいさの乗った小舟の到着を待っています。
細川家を出るのはるいさの強い意志によるもので、玉はるいさの意志を尊重して豊後に向けて密かに出港する手筈を整えました。
豊後を選んだのはるいさがキリシタンで、当時南蛮文化の先端であった豊後であればるいさも信仰を保てると考えた為です。
るいさも見送る側も皆白装束でした。
深夜に皆白装束だったのは、幽霊か何かのように思わせて人が近付かないよう考えての事でしたが、屋敷に帰る頃にら
「深夜の外出がバレたら忠興公に殺される」
と助次郎も侍女も恐怖に感じているようでした。
るいさを見送る時、一緒に行った侍女らは別れを惜しんで泣いているのに、私は涙も出ず二人を見つめながら
「どうかその子の父親の名を言って!」
と泣きそうな思いで心の中でずっと祈っていました。
「目元や口元も忠隆(細川夫妻の長男)の小さい頃によく似ている。
きっとこの子の父親は夫忠興だ。
るいさもこの子も側に置いておきたい。
信頼するるいさと夫の子ならば、この子を細川家の子として育てたい。
るいさ、どうかこの子の父親は夫であると言って!
そうすればこのまま二人を連れて帰れるのだから!
お願いだからこの子は夫の子だと言って!」
見送りの間中そう祈っていましたが、その願いも虚しくるいさは最後まで父親の名は出しませんでした。
以上が初めて「るいさ」について脳裏に流れ込んできた情報です。
その後
「るいさはガラシャの近くにいたはず!」
と思い、毎日深夜に1時間以上ガラシャと「るいさ」について検索し続けました。
いくら「ガラシャ、るいさ」で検索をかけても、ガラシャの記事に目を通しても「るいさ」らしき女性は出てきません。
るいさを探し始めて1ヶ月近く経った頃、ふと思い出しました。
「一緒に見送りに行った侍女達は『るいさ』に寄り添って泣いていた。
ならば『るいさ』はガラシャの侍女だ!」
そこで
「侍女、るいさ、細川ガラシャ」
の3つのキーワードで検索したところ、やっと「るいさ」に巡り会う事が出来ました。
記述があるのはたった一つ、ルイス・フロイスの記した『日本史』だけでした。
当時私が読んだ記事は見当たらなくなりましたが、そこには
・ガラシャの侍女頭「ルイザ」はキリシタンで絶世の美女だった。
・細川忠興がガラシャの侍女であるルイザに手を出そうとしたので、ガラシャとルイザは怒った。
・ガラシャの手配でルイザは細川家を出た。
・ガラシャがルイザを逃した先は京都である。
という出来事が書かれていました。
「間違いない!るいさだ!
本気で誰かを隠そうと思うなら、身近な人間であっても本当の事を言うわけがない。
敢えて信憑性もあって真逆の方向にある京都を側にいた人達に告げたに違いない。
でも子供は?あの子はどうなった?」
そう思って「るいさ」について調べ続けたものの、いまだにルイス・フロイスの『日本史』に書かれている事以外全く分かりません。
ルイス・フロイスの『日本史』記載事項と私が見た情報の間の一致、もしくは似ている点は
・ガラシャの侍女にるいさ(ルイザ)という女性がいた。
・るいさ(ルイザ)は絶世の美女だった。
・るいさ(ルイザ)はキリシタンだった。
・細川忠興がるいさ(ルイザ)を狙っていた。
・ガラシャがるいさ(ルイザ)を逃した。
の5つ。
対して異なるのは
・侍女の名は「るいさ」↔︎ 侍女頭の名は「ルイザ」
・るいさ(ルイザ)を逃した先は豊後。
↔︎ 京都
・夫とるいさ(ルイザ)の間に子供が出来た。
↔︎ 記載無し
・ガラシャはるいさ(ルイザ)を引き留めたかった。
↔︎ ガラシャはルイザを積極的に逃した。
・ガラシャは夫とるいさ(ルイザ)との関係を歓迎した。
るいさ(ルイザ)を信頼していたから。
↔︎ ガラシャは夫の浮気に腹を立てた。
の5つ。
これを私の妄想と見るか、伝聞に頼るルイス・フロイスの記載に誤ちがあったと見るか。