大学を卒業して37年が経つ。 

私が大学のテニス部6年目の時に、新入生として彼が入部してきた。彼は元気なムードメーカーで、私の医科大学最後の試合の時も声を枯らして声援を送ってくれて、ボールボーイをして全力で私を支えてくれた。

その5年後、彼が6年生になり、今度は私が彼の試合を応援しに山中湖へ行った。練習試合で私は左右に振られてコテンパンに負けた。彼がメタクチャに強くなっているのを実感し嬉しくて目を細めた。

その後いつかもう一度対戦したいと考えていたが、お互い多忙になりそのうち自分はゴルフに夢中になり、テニスラケットを捨ててしまった。

 

1年半前に散歩の途中に近隣にテニススクールがあることを知り、恐々ながら初級クラスからテニスを再開した。

テニスがこんなに面白いということを改めて知り、魂が喜んでいる自分がいた。ようやく元のレベルまで復活したので、30年来の対戦の夢が叶うかもと思い、連絡を取り今回その願いが実現した。

最初に彼の球を受け止めた時に、自分の体が覚えていた彼の味のあるボールで、旭川時代の若かりし頃の思い出が走馬灯のように湧き出た。

これ、これ、  これなんだ

テークバックの時に左手を添えてコースを隠し、ライジングで打つフラット打法、これなんだよ。

 

彼は今や千葉の大病院の副院長の要職に就いている。

私と合計120歳になるダブルスペア、老人?ペアだったが、それでも若者相手にゲームも取れて、仕事も忘れて少年のようにはしゃいでゲームを楽しんだ。

 

 

試合中彼に感心したことがある。

それは自分の調子が悪くてもパートナーに声をかけて激励し、力を与え続けたことである。

これにより不思議と試合中の流れが悪い方から良い方に変わってしまったのだ。

 

これはあまり良くない治療経過だとしても、  大丈夫 大丈夫、安心してくださいと激励することにより、患者さんが元気を取り戻すという日常の現場と共通する。

医者が患者さんを励まし安心させる声かけは、とても大切なんだと、今回のテニスで、再認識した次第である。