~前回の日記から続く~
Part.2は、昨年の11月20日(火)にアンスティチュ・フランセ九州で行われた、フランソワ・スクイテン&ブノワ・ペータース講演会/交流会に参加した時の模様です。
会場はこじんまりとした会議室で、参加者は数十名。
福岡での知名度と、告知の控えめさ(一応、ブックオカの関連イベントだったようですが。。。)から考えると、これでも多いほうでしょう。
開催前には、プロジェクターのテストを兼ね、「闇の国々」の世界を映像化したPV的なCGムービーを上映。もっとちゃんと見たかったなぁ。。。
●イントロダクション
最初に通訳の方ほかスタッフの紹介が行われた後、福岡在住のBD作家ヴァンサン・ルフランソワ氏が、イントロダクション代わりに、BDの歴史について簡単に講演を。
私がBD好きになったきっかけ、フィリップ・ドリュイエ氏(※1)のBDも紹介され、ちょっと感慨深かった。
(ドリュイエ氏の代表作「ローン・スローン」の翻訳刊行が決まりました! せっかくなので「サランボー」3部作(※2)も翻訳されないかなぁ。。。)
(※1 このブログのメイン読者(?)向けに注釈。エルドンのリシャール・ピナスのソロ作「EAST-WEST」「D.W.W.」のジャケットはドリュイエ作。)
(※2 サランボーは、ワパスーの同名作と同様、ギュスターヴ・フローベールの文芸作品「サランボー」にインスパイアされた作品。フレンチ・プログレ好き増えて欲しいなぁ。。。)
●講演会
そして、スクイテン氏とペータース氏の講演。
「都市に精神はあるのか? どのくらい都市環境が居住者の生活に左右されるのか?」と結構アカデミックな講演テーマが告知されてましたが、実際の講演内容はもう少しポピュラーな感じで、ユーモアを交えながら語ってました。
以前来日し、富士山を描こうとしたが、えんえん晴れず、滞在したホテルのパンフに描かれた富士山を描いたエピソードには笑いました。
「岩石」がモチーフの都市の話で、岩自動車とかヘンテコなアイデアのスケッチが紹介され、こういう発想のシュールさを目の当たりにすると
「ベルギー人の天才は一味違う!恐るべし!」
なんて思いますw
(例えば、画家のルネ・マグリットやポール・デルヴォー、漫画家のエルジェ(タンタン)等、一筋縄で行かない発想の芸術家が思い浮かびます。
ロックでもベルギーは、クラムドディスクが真っ先に思い浮かびますし、プログレでも「ユニヴェル・ゼロ」「アクサク・マブール」「コス」「Xレッグド・サリー」と、独特な変拍子に特徴があり、ユニークで唯一無二の音楽性を持ったバンドばかりです。)
ともあれ、二人の創造や発想のソースの一端も垣間見え、未公開デッサン等も映写され、大変興味深い内容でした。
●Q&A
講演終了後は交流会。まぁ、質問の時間とサイン会です。
せっかくの機会ですし、いろいろ質問したかったのですが、時間の制約等もあり、
次の3点について質問させて戴きました。
私も絵を描くので、まずは一番気になる事を。
Q「絵(原画)はどのくらいのサイズで描きますか?」
どうやら、A0やA1サイズの大きなパネルに描くっぽいです。
そして、主に50cm程度の原稿で描く日本の漫画との違いについても語ってくださいました。
まぁ確かに、1コマ1コマをあれだけ緻密に描くとなれば、日本の漫画原稿用紙程度じゃ小さすぎますね。
そういえば、確かスペインのBD作家ヴィンセント・セグレル氏(「傭兵シリーズ」)は、身長サイズのキャンバスに油彩で描く…という話を聞いた事があります。
BDの絵の密度感は、やはり絵のサイズならではなんだなぁ…と納得。しかし、1枚描くのに相当時間かかりそう。
(動画は、スクイテン氏のライブ・デッサン。女性作曲家ライン・アダム(LineAdam)さんとのコラボ企画で、ピアノとチェロの演奏に合わせた即興パフォーマンス。一応、スコアあるので、完全即興ではなさそう。)
次に、物語の内容に踏み込んで。
Q「例えば「NOGEGON」(1990年 ユマノイド・アソシエ社刊)は、話や構図が、表紙から読んでも巻末から読んでも同じ展開になるよう、中央頁で合わせ鏡みたいに構成されたシンメトリー構造です。
「狂騒のユルビカンド」(※3)では、最初、主人公の都市建築家は都市のシンメトリー構造にこだわってますが、成長するキューブが、たまたま斜めに置かれたため、シンメトリーを壊すものとして機能し、やがて都市に破壊をもたらします。
「傾いた少女」(※4)では、斜めにしか立てない少女が主人公です。
このように、シンメトリーとアシンメトリーの対比が物語の重要なモチーフになっているように感じますが、これはどの程度意図されたものなのでしょうか?
(※3,4 「闇の国々」収録作)
これについては長いご回答を頂いたのですが、要約すると
「自分も意識していなかった特徴を指摘した作品分析をありがとう。シンメトリーやアシンメトリーについては、自分が建築家であることも影響しているのではないかと思う。」
といった内容だったと思います。
確かに、スクイテン氏は建築家として、セヴィリア万博のルクセンブルグ館や、ブリュッセルやパリの地下鉄のデザインを手がけていますし、建築家としての側面が作品の下地となって無意識的に表れるのでしょう。
最後に、映像化について。
Q「メビウス氏は自作をアニメ化(時の支配者、アルザック)していますし、エンキ・ビラル氏は映画監督(バンカー・パレス・ホテル、ティコ・ムーン、ゴッド・ディーバ)をやっています。
お二人は、ご自身でメガホン取っての自作映像化には興味ありますか?」
これについては、
「映像化には興味があり、映画の美術デザインをやった事があるが(スクイテン氏)、自分で作る予定はない。
但し、現在、映像作家とのコラボレーションという形で取り組んでいる作品がある。」
との事でした。
そういえば、「ゴールド・パピヨン」(※5)や「ライラの冒険」で美術デザインやっていたなぁ…と思いながら聞いていました。
コラボレーションについては「アクアリカ(Aquarica)」プロジェクトのことかな?
(※5 ゴールド・パピヨンは、成人向けエロBD「グウェンドリンの冒険(ジョン・ウィリー作)」の映画化作品で、「エマニュエル夫人」のジュスト・ジャカンが監督。残念ながら映画は駄作。エマニュエル夫人と言えばプログレマニアには、キング・クリムゾン「太陽と戦慄Part2」そっくりの曲が有名ですねw フリップ翁は実際に訴訟したとか。)
~Part.3へ続く~
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