村井の姿を見て、祈るような気持ちで早く建物の中に入ってくれと思っていた。
しかし、なぜか村井はもたついている。
この時、サマナたちの動きは明らかにおかしかった。
入り口で村井の前に立ちふさがるように見えた。
しばらくそうしていたが、ようやく村井は左側へ向きを変え地下への階段を降りていった。
あ~、よかった。
そう思っていたら、ここから事態は急変する。
下へ降りていったはずの村井が、再び姿を現したのだ。
当時を知らない人のために、もう一度確認しておく。
これは生放送であり、映像だけでなく音声も捉えられていたのだ。
入口の前に立った村井は怪訝そうな表情でこう言っていた。
麻原に地下から入るように言われた。
鍵が開いているからと言われたのに鍵がかかっていて中に入れないと。
またしても麻原からの電話での指示である。
坂本弁護士事件との違いは、今度は開いていると言われたのに開いていなかったという事である。
佐伯は麻原を疑ったが、村井は微塵も疑う事なく行動した。
言われたとおりにしたのにどうしてだろう?
村井は明らかに動揺し、動きが止まってしまった。