タイトル戦初挑戦でしかも相手の土俵に乗り込んでの完勝。
見事と言う他はない。
プロ棋士の中には阿久津のように、相手の弱点を攻めるのは当たり前などと恥ずかしげもなく言う輩もいる。
渡辺にしても棋王戦で本田の挑戦を受けたとき、一度は本田の得意の相掛かりで勝負したが、その対局で本田に負けた後は二度と相掛かりは指さなかった。
阿久津のように、相手の得意な形では戦わないというのが並の棋士。
しかし、渡辺のようにタイトルを取るような強い棋士は、自ら相手の得意な形に飛び込むこともある。
それこそが強者の証である。
なのだが、相手の得意な形ではやはり負ける。
そして、藤井聡太である。
この天才は、相手の得意とする形に飛び込んでいって、それで倒してしまう。
まさしく怪物である。
だけどなあ、こういうのが見たかったんだよ。
こういうワクワクする勝負が見たかったんだよ。
いやあ、実にいいものを見せてもらった。
負けはしたものの、相手の渡辺も見事な最後だった。
16回連続の王手。
それを全て見切っていく藤井聡太。
お互いに秒読みに追われながらの、手に汗握る見事な攻防だった。
この王手、最後の2回は別にして、14回は応手を一つ間違えるだけで一気に形勢は逆転し、藤井玉は頓死する。
14回連続で逆転の可能性を持つ王手をかけ続ける渡辺。
その渡辺に対し、14回連続で正解を導き出しギリギリ交わしきった藤井聡太。
ほんと、見応えがあった。
勝負って、いいなあ。(笑)