サンジャヤ本 ボツリヌス・トキシン編⑧ | 法友(とも)へ

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遠藤の実験室での培養、広瀬のプラントによる大量培養。

 

この橋渡し役として、上九のコンテナの中でドラム缶での培養を行ったわけだが、遠藤、村井、麻原は培養の成功を信じていたようだ。

 

麻原はわざわざドラム缶の置いてあるコンテナの中にまで入ってきて祝福を与えたのだが、そのときのお付きが村井と石井そして遠藤であり広瀬はいなかった。

 

もしかしたら、広瀬はこの事を知らなかったのかもしれない。

 

 

遠藤からの連絡で村井と麻原がやって来たと思われるが、なぜ遠藤は培養の成功を確信したのだろうか?

 

まあ、本人は死んでしまっているし、生きていたとしても何も喋らないと思う。

 

なので、推測するしか無いが、論理的にその理由を考えてみたいと思う。

 

 

まず、見た目が違うということが挙げられる。

 

広瀬・村井が培養した最終段階に使用されたのはカゼインであり、ドラム缶による培養に使用されたのはペプトンである。

 

カゼインによる培養液は腐った牛乳、または腐った豆腐が浮いた水。

 

これは当然である。

 

カゼインは水に溶けないのだから。

 

そんな感じなのに対して、ペプトンの水溶液はやや黄色みがかった透明な液体。

 

こちらは完全に水に溶ける。

 

サットヴァレモンを薄めに作るとそっくりな見た目になる。

 

 

続いて匂い。

 

広瀬・村井の培養液はもの凄い異臭がしていたが、ドラム缶の培養液はわずかにペプトン特有の匂いがするだけで、ほぼ無臭。

 

 

まあ、ここまでで、広瀬・村井チームは誰が見ても失敗。

 

素人目にも失敗なのだが、遠藤はとりあえず生物学の専門家なので、ドラム缶の培養液が異臭が発生していないというだけでは成功しているとは考えない。

 

遠藤が信じたのは、20分おきに70時間以上に渡って計測されたデータである。

 

それは、培養液中のタンパク質の濃度を調べたものであるのだが、グラフに記録されたその数値は、一直線に増え続けていた。

 

 

なぜ、遠藤は、タンパク質の濃度にこだわったのか?

 

それは、ボツリヌスの毒素はサリンのような化学物質ではなく、タンパク質で出来ているからだった。

 

培養液は透明で綺麗なまま、異臭はしない。

 

しかも、タンパク質の濃度は時間経過とともに上昇し続けている。

 

つまり、培養液の中で何らかのタンパク質が増え続けている。

 

そして、培養タンクは予め滅菌され雑菌は繁殖出来ない。

 

その滅菌されたタンクに投入されたのはボツリヌス菌だけである。

 

 

これだけの条件が揃えば、培養が成功していると考えても矛盾はない。

 

手柄を立てたがっている遠藤が、成功の報告を待ちわびている村井が、喜び勇んで麻原に報告するのも無理はないのである。

 

しかし、このとき、広瀬はタンパク質が増えた理由が他にあると考えていた。