名人戦第六局は佐藤名人の勝利での防衛となった。
最後の勝ちリップで盛り上がったが(笑)、人間同士の戦いでは今年一番の名勝負と言ってよいと思う。
過去に名人を3期保持した者は全員が永世名人になっているので、佐藤もまた20世名人になる可能性が大である。
対局している二人にとってはまさに死闘。
最近見かけるようになった7四歩をわざと取らせる羽生に、堂々とそれを迎え撃つ佐藤。
飛車を定位置に戻すのに手間取る佐藤を尻目に、羽生は駒組みを進めて攻撃を仕掛けようとする。
これを防ぐために佐藤は一旦7七金と受けるが、これでは角が使えない。
佐藤はじっくりと駒組みを進め、歩切れの羽生は攻めの糸口をつかめない。
この間の評価値は、歩得の分の佐藤良しの200点前後で推移する。
駒組みが整って7八金と下がったところで羽生が8六歩と仕掛けて戦いが始まるが、100手まで進んでもまだ評価値は互角のまま。
しかし、ここから羽生がじりじりとリードを広げていく。
佐藤が攻めの拠点としていた歩を金で全て払い、中央を制圧。
さらに角の活用まで図り、評価値は羽生の500点プラスにまで傾いた。
最終盤の110手までも進んだ段階での500点は、常識的には勝負ありである。
これで第六局は羽生の勝利だな、タイトルの行方は最終局に持ち越されたな、と思って見ていた。
ところが、なんと、ここから10手ほど進む間に大逆転が起こり、佐藤名人の1000点プラスになってしまう。
終盤は一手間違えただけで逆転が起きてしまう可能性はあるにはあるが、戦っているのはあの羽生国民栄誉賞である。
指し手を見ていても、いったいどこにそんなミスがあったのかが分からない。
まさに天彦マジック。
最後は5二銀の王手で羽生の投了。
思わずひふみん戦を思い出してしまった。(笑)
ここから19手詰らしいのだが、さすがはプロ、二人とも読み切っている。
いやあ、いいものを見せてもらった。