波野村から富士へ帰るときの事、そこで初めて大宇宙占星術を実際に使っているところを見た。
先頭には麻原の乗るベンツ。
その後ろ、2番手の乗用車の後部座席に座って、僕は何気なく前方を見ていた。
後ろにも何台か車が続いており、最後尾にバスが待機していたように思う。
すでに乗員は乗り込んでいるはずなのに、車列はなかなか出発しようとしない。
どうしたのかなと思ってみていると、先頭車両の前に遠藤が立ち、車を制するように右手を前に伸ばしていた。
左手首に巻いた腕時計を見ている。
10分ほど待たされた頃だろうか、遠藤が右手の人差し指1本だけを立てて、何か喋った。
「あと1分です。」
そう言ったように思えた。
暫くして、遠藤がまた何か言った。
続いて、右手の指を大きく開いて前に突き出した。
その指が1本ずつ折りたたまれていく。
5・・、4・・、3・・、2・・、1
遠藤は横に飛び退き、右手を振り下ろした。
「ゴーッ!」
そう叫んだように見えた。
次の瞬間、ベンツは急発進。
一気に加速していった。