失敗する以外にも、サリンを撒かずに済む方法は他にもある。
それは、麻原を論理的に説得するということである。
これは、麻原が「グルの言うとおりにしろ。」と言う時の状況を見れば簡単に分かることである。
麻原が言うとおりにしろと言うのは、いつも必ず、弟子の受け答えが的外れであり、無智丸出しになっているからである。
論点を外すことなく、論理的に説明出来るのなら、麻原を納得させる話をすることは不可能ではないのだ。
では、これを実際に起こった事の状況に当てはめて考えてみよう。
指示を出したのは麻原ではなく、村井である。
村井は盲目的にグルの指示を実行するタイプの弟子なので、論理的な説得というものは基本的には通用しない。
ここに麻原の、地下鉄にサリンを撒くという行為の本気度がうかがえる。
自分が直接に指示を出すのではなく、間に村井を置くことで反論の余地を与えていない。
逆に言えば、弟子たちに論理的に反論の余地を与えるようにして話をしている場合は、それは本気ではなく、弟子たちが何を考え、どのように行動するのかを探っているのだ。
そして、その時に得られた情報は、後にタントラヴァジラヤーナの実践を行うときに役立てられることとなる。