専門家でも何でもないんだけど、一般人よりは多少は詳しいと思うので、簡単に書いておこうと思う。
まあ、オウマーであれば、既に知っていることばかりかもしれない。
VXは人類最後、最強の毒ガスである。
ナチスのサリンに対抗して連合国側が研究、イギリスが開発しアメリカが完成させた。
毒性はサリンの20倍から30倍もあり、しかも神経ガスというだけでなく、イペリットのようなびらん性ガスの特徴をも併せ持つ。
そんなVXであるが、実際に戦闘に使われたことはなく、公式にVXガスによる死亡例は、オウム事件による日本人1名だけである。
したがって、今回の事件でVXが使われたのであれば、人類史上2例目となる。
VXはサリンのように揮発性が高いわけではなく、それほど危険性に配慮する必要がない。
これはオウム事件を見ても明らかである。
VXはサリンと同じく皮膚から吸収され、人を死に至らしめる。
今回のような「手袋ぬるぬる」方式は、非常に効果が高いと思われる。
顔全体をひとなですればそれで事足りる。
最初に、イペリットのような目の痛みや、顔の火傷のような症状に気を取られているうちに、神経ガスの成分が体内に侵入し、数分で確実に死に至る。
もちろん、この間にPAMを打てば助かるのだが。
現時点では、死因も、使用された毒物が何であるかも、まだ公表されていない。
これが日本であれば、解剖すれば死因が分かるし、血液を分析すれば毒物が何かが判明するはずである。
もしかしたら、マレーシアには、日本のような技術がないのかもしれない。
サリンでもVXでも、神経ガスの症状は縮瞳など様々なものがあるが、死因となるのは呼吸中枢の破壊と気道閉塞による呼吸停止である。
オウム事件の場合、血液の分析は死後11か月後に行われたが、VXの代謝物が発見されている。
サリンの場合のメチルホスホン酸のように、安定な物質に変化してそのまま残っているようである。