号令一下、機動隊員たちが一斉にしゃがみ、その姿はジュラルミンの盾の陰に消えた。
ジュラルミンの盾が、一枚の壁のように動き始めた。
ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!
靴音が響く。
十数人の靴音のはずなのに、一つにしか聞こえない。
その音が全くよどみのないリズムで、こちらに向かってくる。
盾の上には、何も見えない。
盾の下にも、何も見えない。
盾の下にはわずかに隙間があるのだろうけれど、靴の中には鉄板が入っているのだろう。
人間が盾を手に持ち、それを動かしているはずなのに、まるで盾だけが一つの生き物のように動いている。
隣り合った盾の間には、隙間がない。
しゃがんだ姿勢で歩いているのだから、盾が左右交互に斜めに傾いてもよさそうなものだが、その様な隙はどこにもなかった。
見事な動きだ。
これじゃあ、鉄パイプや刃物を持っていても歯が立たない。
こちらからは見えないが、機動隊員たちはジュラルミンの盾の上部に開いたスリットからこちらの様子をうかがっているのだろう。
鈍い銀色に光る盾の壁は、空き地から小道へと入った。
靴音は一定のリズムを刻んだまま止むことがない。
そして、小道からオウム敷地内のコンクリートの上へとやって来た。
門扉までの距離、残り1メートルを切った。
来い!(笑)