いつの間にかNの姿が消えていた。
まあ、仕方あるまい。
女だからな。
全く、男女平等というものは素晴らしい。
暴力沙汰、汚れ仕事はいつも男のものだ。
その代わりと言っていいのかどうか、男のサマナがひとり正面玄関からやって来ていた。
機動隊に対するは、こちらは相変わらずの3人態勢だ。
門扉の前に立つ、3人の勇者たち。(笑)
右にM、左にサマナ、そして中央を守るのはR、そういう布陣となった。
機動隊10数名と一番左に立つ背広一人。
背広の号令に従って、整列した機動隊員たちが動く。
「ドスッ、ドスッ、ドスッ、・・・・」
左から順番に、手にしたジュラルミンの盾を地面に付きたてるように置く音が、一定のリズムで右に移動していく。
真理の実践者たちは、機動隊に向けて叫ぶ。
「帰れー!」
「宗教弾圧はやめろー!」
「国家権力の横暴だー!」
「憲法を守れー!信教の自由を保障しろー!」
おそらくは、何の意味もないであろうことを知りながら、声を限りに必死に叫んだ。
「何で誰も来ないんだよ。」
僕の隣にいたサマナがぼやいた。
確かにそうだ。
援軍は来ない。
機動隊を追い返せと言われて頑張ってみてはいるものの、どこからも応援はやってこない。
道場の中の状況がどうなっているのかは、ずっと外にいた自分には分からない。
普通に考えるのなら、「見捨てられた。」
そういうことになるだろう。
だが、不思議と腹は立たなかった。
人生なんて所詮そんなものだという諦めもあるが、男なら、ここできっとこう言うべきなのだろうと思う。
「よくぞ、男に生まれけり!」と。