隊列は二手に分かれた。
何人かは、道路の向こう側を富士山総本部道場の正面玄関へと向かう。
対して機動隊本隊は、道路を横断してサティアンへと向かった。
あらかじめ調べはついているのだろう。
サマナたちがいる総本部道場ではなく、麻原がいるサティアンへと狙いを定めている。
機動隊は、こちらとは一定の距離を保ちながら移動している。
普段サマナたちが利用している、サティアンへと向かう小道には目もくれず道なき道を進む。
そんなところを通って移動するんだ。
と、思う。
日常生活においては、基本的に移動するときは道の上を通る。
そんな常識とはかけ離れた、道のないところを移動していく機動隊の姿は、かなりの違和感があった。
まさしく観念の崩壊だが、これは考えてみれば当たり前のことだ。
警察に限らず、自衛隊でも軍隊でも、道のある場所だけが戦場とは限らないのだから。
人間が自然を破壊して作り上げた人工物、いわゆる道路の上を歩くというのは、平和ボケした民衆の思い込みに過ぎない。
走った。
それまでに何度も通ったことがあるサティアンへと続く小道。
いつもは歩いて通っていたが、その時、初めて走った。
全力疾走。
そう言っていいと思う。
門扉はすでに閉じられていたが、鍵がかかっていることを確認する。
門扉を背にして立つ。
小道を挟んで向かい側の空き地には、次々に機動隊が集結していた。