熊本県警強制捜査⑥ | 法友(とも)へ

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それにしても実に見事な侵入だった。


ほんの2、3秒、空を見上げていたり、上九方面に目をやっていたら、完全に見逃してしまっている。


高性能の整備が行き届いた車に、高度な運転技術を持つドライバー。


そのふたつが揃って、初めて可能になるということなのだと思う。



ライオンや虎などの猛獣は、獲物を脅したりはしない。


餌は捕まえて、ただ食らうだけ。


相手に気付かれないように気配を断ち、いきなり襲う。


そんな感じで、警察はやって来た。


それが強制捜査というものなのだろう。



僕のとなり、少し左側にいたMも気付いた。


監視小屋の中でアストラルへの旅を楽しんでいたNに向かって叫んだ。


「NDッタラー。警察ー!」



その声で正気を取り戻し、苦しみの世界へ戻って来たNが、


「え?何?」


みたいな顔をしているところへ、MGヤが続けて叫ぶ。


「警察が来た!事務所へ電話しろ。」



ここから先のNの反応は、さすがに早かった。


朝、強制捜査があるという報告を受けていたために、内線の電話番号はすでに頭に入っている。


すぐに電話をかけ、受話器を置いたNの顔がなんだかとても悲しそうに見えた。


そして、呟くように言った。


「追い返してくださいって。」



意表を突く答えが返って来た。


強制捜査があるという情報を得ており、そして実際に強制捜査があった。


その対策が、「追い返してください。」の一言だけ。



「誰がそんなバカな事を言ってんだー!」


Mが叫んだが、これには僕も同意見だ。


そして、すぐにNがそのバカの名前を教えてくれた。


マハーケイマ正大師。


それが信じ難いほどのバカの名前だった。(笑)