三塩化リンとメタノールを反応させると、酸化力の違いから塩素がメチル基に置き換わる。
三塩化リンから外れた塩素と、メタノールがメチル基になるときに外れた水素が結びつき、塩化水素すなわち塩酸が発生する。
この酸を中和するために塩基を使うのだが、最初は水酸化ナトリウムが使われ、途中からジエチルアニリンに代わった。
米軍ではジエチルアニリンではなく、イソプロピルアミンを使っているそうだが、なぜ土谷はジエチルアニリンを使ったのだろうか?
その答えが、土谷が使っていた分子軌道計算ソフトにある。
土谷はトリエチルアミンも使ってみたそうだが、その場合はサリンを作れなかったそうである。
中川はこの事を不思議がっていたそうだ。
普通に考えるなら、トリエチルアミンを使った場合は、酸がうまく中和できていないということになるのだと思う。
場合によっては、塩基性が強くなりすぎてしまっている可能性もある。
トリエチルアミンをジエチルアニリンと同じ量使用した結果そうなった可能性が考えられる。
要するに、サリンの中和剤として使われる水酸化ナトリウムと同等かそれ以上の、サリンに対する分解能力を持っている場合。
しかし、土谷には職人技がある。(笑)
トリエチルアミンをワンパターンで滴下するのではなく、様々なケースを試しているはずだ。
ということは、トリエチルアミンでは、初めから全く酸が中和されていないということなのではないだろうか。
この事は、また後で検討してみたいと思う。
トゥー先生の講演会に行くことはもうないかもしれないが、この答えを持っていけば、なんだか話が弾みそうな気がする。(笑)