戻って来た。(笑)
第一段階
三塩化リンにメタノールを加えて反応させ、亜リン酸トリメチルを合成する。
その時に発生する酸(塩化水素)は、塩基であるジエチルアニリンを使って中和する。
そうしないと、反応が途中で止まってしまう。
土谷は最初に純度の高い透明なサリンを作ったとき、ジエチルアニリンではなく水酸化ナトリウムを使っている。
ジエチルアニリンはサリン製造の最終段階にも使われており、酸を中和できなければ出来上がったサリンは可逆的に反応し、再び反応前のメチルホスホン酸ジフルオリドに戻ってしまう。
なのだが、皆さんご存知のように、水酸化ナトリウムはサリンの除染のために使われる、もっとも有効な中和剤である。
土谷は、その除染のための中和剤を、サリン合成の最終段階で同じ液体の中で反応させ、サリンを分解させることなく酸を中和させサリンだけを取り出している。
これはもはや、職人技というべきなのではないだろうか。
オウムにおいて、土谷の化学兵器が成功し、遠藤の生物兵器が失敗した大きな理由は、遠藤の傲慢さがもたらした無能さ故であるといえる。
なのだが、それだけでなく、遠藤には土谷のような職人技がなかったという事なのだろうと思う。
この職人技というやつは、学歴には全く関係がない。
持って生まれた天性の才能であり、努力によって磨かれていくものである。
遠藤をはじめ、幹部たちの間では、学歴を重視し、職人技を侮る傾向があった。
が、しかし、ヴァジラヤーナは結果が全てである。
麻原は幹部たちと違って、土谷の職人技を認めていたということなのだろう。