ハチクマはスズメバチの嫌がる物質を出しているわけではない。
それなのに、スズメバチたちは攻撃もせずに逃げ惑う。
一見すると不思議な事のように思えるが、実は当然とも言える行動なのだ。
虫は人間のように考えたりしない。
あれこれと悩むことなく行動を選択する。
本能という定められたアルゴリズムの中に、選択肢はそう多くはないのだ。
巣に対して、敵からの攻撃が加えられた時の、スズメバチの反応は3つしかない。
攻撃。
ほとんど場合は、これが選択される。
いつもの見慣れた光景と言っていい。
その他の選択肢のひとつとして、何もしないがある。
これは敵の攻撃を脅威と感じていない場合である。
つまり、敵に対する攻撃は、その敵の攻撃を脅威と感じているということである。
そして、その脅威の背景には恐怖があり、恐怖を排除するために敵を攻撃しているという事なのだ。
何もしないパターンには、小さなハチやハエなどの寄生虫がある。
この小さな虫たちは、驚くべきことに自由にスズメバチの巣に出入りをしている。
そして、幼虫や成虫に卵を産み付けるのだ。
成虫に卵を産み付けるというのは不思議な気がするが、小さな寄生虫から見れば大きなスズメバチの体は、節と節の間が隙間だらけなのだ。
祖に隙間に針を差し込み、あっさりと卵を産み付ける。