中川とトゥー先生が、それぞれ他の死刑囚について語っていることがある。
中川が横山について語っている事。
まあ、これはオウムの死刑囚全般について言える事なのだが、なぜ死刑判決が出たのかというところ。
これについて中川は、「横山は喋るのがへただから。」
という事を最初に語ったという。
そして、死刑と無期の境目で、色々なファクターが重なり、わずかな差で死刑に傾いてしまった。
そういう見解だという。
本人の喋り方、弁護士の技量、裁判官のその日の気分、他の日であればまた違った結果であったかもしれない。
そんな風に中川は考えており、トゥー先生も同意見だと言う。
続いて、トゥー先生の土谷に対する見解。
トゥー先生はあの当時の法律では、土谷を死刑にする根拠は希薄ではないのかと思っているそうだ。
たしかに土屋はサリンは作ってはいるが、使ってはいない。
しかも、直接の関わりもあるような、ないような、である。
最初に土谷が作ったのが、無色無臭(純度90%)のサリン。
このサリンでは犠牲者はいない。
次に松本サリン事件で使われた、いわゆる青い(純度70%)サリン。
これは土谷が中川に作り方を教えながら製造された。
土谷本人は純度の高いサリンを作れるのだが、中川が作業を若干ミスしたために純度が落ちた。
そして、地下鉄サリン事件で使われた、いわゆる茶色い(純度35%)サリン。
これには土谷は関与していない。
作ったのは遠藤と中川であり、遠藤のミスによりさらに純度が落ちた。
これでは土谷を死刑にする根拠が乏しいと言わざるを得ない。
まさに、恐怖は正常な判断を狂わせるという事なのだろうと思う。