オウム事件において、中川の果たす役割は非常に重要であった。
僕も、トゥー先生から色々と話を聞くまでは中川を軽く考えていたのだが、思っていた以上に重要な役割を果たしていた。
土谷が化学の天才なら、中川は科学全般の天才といっていいのではないかと思う。
中川は非常に幅広い面で、その優秀さを発揮している。
オウムにやって来なければ、きっと大勢の人を救う名医になっていたことだろう。
で、その中川は、土谷と一緒に毒ガスの製造に関わっている。
そして、アンソニー トゥーのおかげでオウムが化学兵器の隠蔽に走った時に、そのほとんどを中川はひとりで処分している。
何十万人もの人々を殺傷するだけの大量の化学兵器を、たったひとりでである。
たったひとりで行ったことなのだから、中川以外には誰も知りようがない。
それなのに井上が裁判でおかしな証言をした。
中川が裁判で声を荒げる事があったのは、そのためである。
トゥー先生が中川にVXの事を聞いたとき、
「VXの事を話すと、大勢の人に迷惑がかかる。」
「だから、自分が隠したと証言をした。」
そう答えたということだ。
たしかに、死刑の上に罪を重ねても、死刑であることに変わりはない。
中川はそうやって法友を守り、その秘密は墓場まで持っていくつもりなのだろう。
その覚悟は、最後まで見届けたいと思う。
出来るなら、来世もまた中川と一緒に修行がしたいなあ。
まあ、タントラヴァジラヤーナは今生だけで勘弁してもらいたいところではあるのだが。(笑)