サリンの恐ろしさは呼吸だけでなく、皮膚からも吸収されるところにある。
それで高橋さんは亡くなったわけだが、トゥー先生は奥さんとも会っているそうだ。
奥さんはトゥー先生の本を読み、
「知らないことがたくさんありました。有難うございました。」
と言ったらしい。
この皮膚からも吸収されるという特性があるために、その防護はガスマスクだけでは不十分であり、警察が強制捜査に二の足を踏んだのもそこにも理由がある。
前にも書いたが、オウムにとってサリンであることが特定されるのが予想よりも早く、それが誤算であったのだろう。
当時の日本の化学者たちの能力を考えれば、使われた毒ガスがサリンであることなど分かるはずもなかったからだ。
ところが、トゥー先生によれば、サリンであることは直ぐに分かるという。
分からないのは、誰が?どこで?
ということなのだそうだ。
まあ、それは、化学者の仕事ではなく、警察の仕事だ。
アンソニー トゥーは、化学者としての仕事を十分に果たし、オウムに計画の中止を余儀なくさせたのだ。