激闘を検討してみる | 法友(とも)へ

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AWAKEとponanzaの激闘を振り返ってみたいと思う。


159手で終局となったが、一般的にコンピュータ同士の戦いは人間同士の1.5倍ぐらい手数がかかる。


人間はミスをするし直ぐに諦めるのだが、コンピュータは最後まで諦めずに最善手を繰り出してくるので、逆転されないようにしながらトドメをさすのに骨が折れるからだ。



人間同士の戦いではあまり見ない形、というか序盤から早くも定跡を外れて力のねじりあいになった。


お互いにまるで守る気などないかのような乱打戦からponanzaの無理攻めが炸裂。


わずか62手にして、AWAKEに詰めろがかかる。


飛車金交換の駒損ながら敵陣に踏み込むのはponanzaの真骨頂であり、人間なら絶対にやらない手だ。


しかし、詰めろがかかっていながら、形勢はまだ互角。(笑)



ここからponanzaが攻めをつないでいく。


執拗なまでに玉頭を狙い続ける。


玉のとなりに飛車角が接近しているAWAKEはじりじりと不利な状況へ追い込まれていく。


普通ならここまで追い込まれたら、相手が人間ならponanzaが負けることなど考えられない。


しかし、AWAKEがぎりぎりの受けを連発。


受からないように見えて受かっている状況を作り出す。


100手目あたりの地味な攻防は大山名人を彷彿とさせる。



この段階では、まだponanzaは自分が有利だと判断し、AWAKEは自分が不利だと判断していた。


この両者の判断に食い違いが出てくるのが、この後からである。


103手目にしてAWAKEが5一飛と打ち下ろし、初王手。


4一歩と守ったところへ、さらに9六角と追撃する。


ponanzaが4二金寄と守ったところで、ただで金を取れるところを取らずに、2四歩の突き出しが渋い。



実はこのあたりで、いままでずっとマイナス評価だったAWAKEの評価値がプラスになり始めた。


もちろんponanzaは、まだ自分がかなり有利だと判断している。


評価値は1,000を超えていた。


激指で検討してみても、評価値は1,000に近く、ponanza有利の判定となっている。


指し手はすでに110手にもなっており、ponanzaの勝利は確定的に思えた。


この時、ただAWAKEだけが、自身の勝利を信じていたのだろうと思う。



112手目、3八龍で、再びAWAKEに詰めろがかかる。


相変わらず評価値にはほとんど変化が無い。


しかし、ともに1秒で指されたAWAKEの8七角からの4三角成りで、どうやら逆転したように見える。


2二金と打たれてみると、これは同玉と取るしかなく、ここで先に突いた2四歩が生きてくることになった。



ここまで来て、ようやくponanzaが自分の不利を認識し始めて、評価値が一気に変動した。


コンピュータでもというか、ponanzaでもミスをするというのが驚きだったのだが、AWAKEはノーミスで最後まで寄せ切った。



この最後の場面は非常に印象が強く、様々なドラマがあったように思う。


この決勝戦の時に同時に5位決定戦も行われていたのだが、5位進出を決めたAperyの開発者は自分の対局そっちのけでAWAKEの開発者のところへ駆けつけていた。


あのponanzaの初敗北。


その光景を目にした全ての人が一様に興奮していたと思う。



そしてponanzaの開発者のコメント。


まだ現実を受け止められないと言って泣いていた。


「羽生さんと戦いたい。」


優勝すればもう一度、その言葉を口にするつもりでいたのだろう。


だが、その夢は破れた。


二番では人間界の一番に相手をしてはもらえない。



さてさて、この化け物のようなコンピュータ相手に、プロ棋士たちはどんな戦いをみせてくれるのだろうか?